西洋医学では「病名」を診断するのに対し、漢方医学では「証(しょう)」を診断する。「証」とは、ある時点で患者の表している相互に関連ある症候を漢方医学的概念で表現したものである。ここでいう漢方医学的概念には、八綱(はっこう ; 陰陽・虚実・寒熱・表裏の総称)、気血水(きけつすい)、五臓(ごぞう)などがある。こうした複数の概念の組み合わせ、また、自覚症状および医師の五感を総合して、体のどこに異常や弱点があるかを診断する。そして、最終的には「ある特定の処方が効くであろう」、すなわち「○○湯証」という判断を下す。この判断に基づき、実際にその処方を用いて治療効果が認められて初めて「患者は○○湯の証であった」と確定できる。処方が無効であった場合は、病態把握を見直し、「証」を再考する。「証」は時間の経過、あるいは治療によって変化するため、病態の変化に応じて処方を逐次修正する必要がある。