疲れを感じる、体がだるい・重いなどの症状は、主訴にかかわらず問診時にしばしば耳にする体の不調である。漢方医学では、疲労は生命活動を営むエネルギーである気(き)が少なくなった気虚(ききょ)の状態と捉えている。気には親から受け継いだものと、毎日の食事や呼吸から作り出すものとがあり、前者は加齢に伴って減少し、後者は食生活の乱れなどで消耗する。そこで漢方的治療では、気を補う朝鮮人参(ちょうせんにんじん)や黄耆(おうぎ)などを含む補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)などが使われる。気を補うには食事と睡眠が基本であり、消耗させないためには食養生や良質な睡眠の確保が不可欠である。ストレスなどによって、気のめぐりが悪い状態が続いても、疲労感が出現する。その場合は気を補うよりも、体のすみずみまでめぐらせることが大切となるため、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、四逆散(しぎゃくさん)、大柴胡湯(だいさいことう)などを用いる。運動や入浴で汗をかくことは、日常生活の中で自力で気のめぐりを改善させられる手軽な方法である。