逆流性食道炎は、胃食道逆流症(GERD)の一つで、潰瘍・びらんなどの粘膜傷害を伴うものである。胃内容物の食道への逆流により、胸やけ、呑酸、胸の痛み、慢性咳嗽(がいそう ; しつこいせき)、嗄声(させい)など、多彩な症状が見られる。治療では、胃酸分泌を抑える薬の服用とともに、食後すぐに横にならない、などの生活指導も行われる。漢方薬では、胃の貯留能を改善し、胃から十二指腸へ消化物を排出する能力を高める六君子湯(りっくんしとう)が頻用される。胸やけが強い場合は、安中散(あんちゅうさん)が有効である。みぞおちあたりに不快感や痛みがある場合で、体力が中等度の人には半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、体力が低下した人には人参湯(にんじんとう)などが使用される。ストレス性の場合は、抗ストレス作用のある柴胡(さいこ)を含む柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)、四逆散(しぎゃくさん)なども使用される。慢性咳嗽や嗄声などがあり、ストレスで悪化する場合は、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、香蘇散(こうそさん)などが考慮される。