原子力発電所で想定不適当事故(→「仮想事故」)が起きたときのため、日本では1961年に原子力損害賠償法(通称、原賠法)が制定され、原則的には電力会社に無限責任を負わせながら、一定の賠償限度額を超えて被害が出た場合は、国会の議決を経て国が対処することにされた。当初その限度額は50億円であったが、ほぼ10年ごとに改訂され、99年12月の改定で600億円となった。また同年9月に、茨城県東海村の核燃料加工工場(株) JCOで臨界事故(→「臨界」)が発生したことを受け、原子力災害に対処するために原子力災害対策特別措置法(通称、原子力防災新法)が制定された。国の権限を強化するとともに、原子力施設周辺に緊急事態応急対策拠点(オフサイトセンター off-site center)を設置し、一定の基準を超えて放射線が検出された場合、対応処置(5μSv/hで事業所から通報、500μSv/hで緊急事態宣言→「被曝線量」)を発動するよう定めている(μSv/hはマイクロシーベルト毎時 μは10-6=100万分の1)。また、2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故を受け、従来は8~10km圏内とされてきた「緊急時防護措置を準備する区域(UPZ ; Urgent Protective action Planning Zone)」を30kmに拡大した。さらに、UPZの内部に「予防的防護措置を準備する区域(PAZ ; Precautionary Action Zone)」を設定し、事故が起きた場合に直ちに避難する範囲を5kmとした。さらに、50km圏内を「プルーム通過時の被ばくを避けるための防護措置を実施する区域(PPA ; Plume Protection planning Area)とした(「プルーム」は環境に放出された放射性物質が雲状になって流れていくこと。放射能雲ともいう)。原子力損害賠償法(原賠法)は09年に改定され、賠償限度額は1200億円になった。