日本で原子力開発が始まった当初は原子力発電を取り扱う政府機関は原子力委員会だけであった。しかし、推進と規制の両者を一つの組織で行うことに問題があるとして原子力安全委員会が設置された。さらに規制の実行組織として、経済産業省資源エネルギー庁に原子力安全・保安院が設置された。そのため、規制が安全委員会と原子力安全・保安院による二重規制となったし、もともと原子力を推進する組織である経済産業省の下に規制組織があることの問題も指摘されてきた。事実、原子力安全・保安院は、原子力発電を推進するための「やらせ問題」に関わるなど、規制組織とは考えられない行動を重ねてきた。その揚げ句に、2011年3月11日に福島第一原子力発電所事故が起きた。そこで、規制組織の抜本的な再編が必要となり、環境省の外局として12年4月から原子力規制庁が設置された。今後、規制の実務を担ってきた原子力安全基盤機構も統合される予定になっている。また、従来の原子力安全委員会が廃止されて、12年9月に原子力規制委員会が設置されたが、本来は国会同意が必要な原子力規制委員長は国会の同意が得られないまま、首相権限で任命するという異常事態となった。