もともと「中間貯蔵」なる用語は、使用済み燃料の再処理が行き詰まった中で、原発敷地内の使用済み燃料プールでは使用済み燃料を保管しきれなくなってきたため、再処理ができるようになるまでの間、使用済み燃料を暫定的に保管するための施設を作ろうとして出てきた概念であった。しかし、2011年3月の福島第一原子力発電所事故以降、広範な環境が放射能で汚染され、下水処理場の汚泥、焼却施設の焼却灰、除染した土壌など大量の放射能汚染物が発生した。次々と蓄積してくるそうした汚染物をどこかで保管する必要が生じ、13年末には同県双葉郡の双葉町(5km2)、大熊町(11km2)、楢葉町(3km2)の合計19km2の地域を国が買い上げ、そこを中間貯蔵地にする提案を出してきた。楢葉町は計画を拒否、他の町でも地権者との交渉は難航している。国は、保管期間を最長でも30年としているが、一度放射能汚染物を受け入れてしまえば、それが別の場所に移動することなどあり得ず、最終貯蔵施設になる。そのうえ、高レベル放射性廃棄物処分場は10km2の広さが必要で、その面積分は地上でも確保するとされてきた。当然、高レベル放射性廃棄物処分場は過疎地に作る以外に選択肢がないわけだが、財政に困窮してきた過疎地の自治体でさえも高レベル放射性廃棄物処分場は受け入れなかった。そうなれば、今回国が中間貯蔵施設を名目に取得しようとしている地域が、高レベル放射性廃棄物の処分場にもされてしまう可能性がある。もともと、汚染の正体である放射性物質は東京電力福島第一原子力発電所の原子炉の中にあった物質であり、れっきとした東京電力の所有物である。住民が被曝しながら集めたそれを住民がまた引き受けるようなことはしてはならず、東京電力に返す、例えば福島第一原子力発電所の敷地内、それがだめなら福島第二原子力発電所の敷地内に返すのが合理的である。