従来の法令では、一般人に対する被曝の線量限度は1mSv(ミリシーベルト)/年であったが、福島第一原子力発電所事故によって東北地方、関東地方の広範な地域が放射能で汚染された。そのため、政府は「今は緊急時だ」として、20mSv/年以内の場所には人々が住んでもよいとした。そのうえで、1mSv/年を目指して除染をすることにした。しかし、除染で放射能を消せるわけではなく、集めた汚染物が次々とたまってきている。その始末ができなければ、これ以上の除染もできなくなる。そこで国は、1㎏当たり8000Bq(ベクレル)を超えて汚染されているものを「指定廃棄物」として国の責任で保管することにし、それ以下のものは各自治体が一般廃棄物と同様に焼却・埋め立てしてよいとした。主要な指定廃棄物は、事故当時野ざらしになっていた稲わら、焼却灰や下水汚泥などで、2013年3月の時点で12万tを超えている。国はそれらをそれぞれの県ごとに「中間貯蔵施設」を造って保管しようとしているが、それを受け入れる地域はなく、計画が行き詰まっている。同年12月になって、国は福島県双葉郡の大熊、双葉、楢葉の3町に合計で19km2の土地を国有化し、中間貯蔵施設を造る計画を発表したが、楢葉町は計画を拒否した。国は「中間貯蔵施設は最長30年で、その後は最終処分地に移す」としているが、そうした場所が約束されているわけではなく、ひとたび中間貯蔵施設を受け入れてしまえば、そこが最終処分地になる可能性が高い。