雑音やデコヒーレンスによる量子情報の未知の変化を元に戻す手法。通常の古典的誤り訂正と同じく冗長性を持たせる必要があり、論理的量子ビット一つをいくつかの物理的量子ビットで表現しておくが、完全に観測をしてはいけないので、工夫を要する。一つの量子ビット状態をいくつかの量子ビットで表現し、冗長性を持たせるコーディング(符号化)法をうまく選ぶと、元の状態を観測せずにどのような種類の誤りが起きたかを知ることができる。誤りの種類がわかれば、逆の操作をかけて元の状態に復元することが可能で、これが量子誤り訂正である。なお、数学的コーディングに頼らず、より物理的に直接行う雑音除去やデコヒーレンス回復もある。たとえば、雑音によりエンタングルメントが弱まった多数のペアから少数の完全エンタングルメントペアを抽出するエンタングルメントの蒸留(entanglement distillation)、それを用いて量子テレポーテーションを行う方法、信号光子にすぐ続けて雑音モニター用の光子を送り、受信側で二つの光子から元の量子情報を有する光子を抽出する方法などがある。これらは「デコヒーレンスのない部分空間(decoherence-free subspace)を用いた方法であるので、通常は量子誤り訂正というよりも「量子雑音除去(quantum noise reduction)」と呼ばれる。2007年、大阪大学の量子情報グループにより、その実証実験が行われた。