真空中に設けた電磁場や交差レーザービームにより原子を捕獲すること、またその技術あるいは装置。通常、原子のレーザー冷却や蒸発冷却などの手法と組み合わせ、現在の科学で到達可能な最も極低温の中性原子100~10万個をmm程度の領域に捕獲し、原子集団の光学的性質やボース・アインシュタイン凝縮実験に用いる。最近では、量子情報処理用の量子ビットとして用いる研究も進んでいる。原子数が大きい場合、原子集団を一つの系として、ほぼ連続変数となるその内部状態と照射光の位相との間で量子情報をやりとりする研究や、1個ないし少数の原子の内部状態と1個ないし少数の照射光子の量子ビット情報をやりとりする研究が行われている。さらに最近、微細加工技術によりチップ状に作った電極を利用して、チップ上あるいはチップに設けた穴の中に原子を捕獲するアトムチップ(atom chip)の研究が行われており、この方式ではすでにボース・アインシュタイン凝縮が達成されている。量子情報処理のためには、大型トラップでは複数ビット間演算が困難なので、アトムチップ研究の今後の進展が期待される。