量子力学の重ね合わせの原理を安易に巨視的系に適用することへの疑義としてE.シュレーディンガーが考えた「生きた猫と死んだ猫の重ね合わせ状態」のパラドックスに登場する猫。量子力学によれば、箱を開けて見るまでは猫は生死が重ね合わさった状態にあり、見た途端に生死が決まるというパラドックスである。実際は、生物のように高い温度で外界と常に相互作用しているものを閉じた系として純粋な重ね合わせ状態に初期化することはまず不可能であるが、人間が検知できるほど巨視的に異なる純粋状態の重ね合わせをシュレーディンガーの猫状態と呼ぶことがあり、そのような状態は作ることが可能である。シュレーディンガーの猫状態は環境雑音に対し極めて脆弱(ぜいじゃく)であるものの、量子情報的には興味深い。たとえば、そのような状態を使った量子通信を用いると、通信量が飛躍的に上がる場合がある(→「量子通信理論」)。なお、「シュレーディンガー」の正式な欧文表記は「Schrdinger」。