ニュートリノ(→「レプトン」)は相互作用の仕方に応じて、電子、ミュー、タウ(νe,νμ,ντ)の3種類あるが、質量による分類と1対1には対応しない。例えば、質量一定の状態では電子とミューのニュートリノ(νe,νμ)が混在し、逆に電子ニュートリノ(νe)は異なる質量状態の混合である。このため、伝播中に組成が変化するニュートリノ振動が起こる。質量差が小さければ、振動の起こる距離は長くなる。宇宙線大気ニュートリノについては地球の直径が基線となり、太陽ニュートリノでは太陽~地球間距離が基線となる。茨城県東海村に完成した加速器J-PARCから撃ち出したニュートリノを、約295km離れたスーパーカミオカンデで検出する実験が行われている。
また、2012年には、中国の香港近くの原子力発電所を用いた実験によって、第一世代の電子ニュートリノ(νe)と第三世代のニュートリノ(ντ)との間の振動が初めて観測された。こうした実験は日本、中国のほかに、アメリカではシカゴのフェルミ研究所~ミネソタの実験施設MINOS(ミノス)間、ヨーロッパではスイスのCERN(セルン)~イタリアのグランサッソ国立研究所間でも行われている。
今後の課題はニュートリノ振動のCP対称性の破れ(CP破れ)を測定することであり、レプトンの正粒子と反粒子で振動に違いがあるかどうかを検証する実験となる。このCP破れが存在すれば宇宙バリオン数生成についてのレプトジェネシス説が有力になる。これは、このようなレプトン世界でのCP破れに起因して、正粒子と反粒子の数に非対称が生じ、この宇宙レプトン数生成が宇宙バリオン数に転化するという説である。