原子核を構成する陽子もクォークの複合体だから、崩壊する可能性は否定できない。ただし、陽子は一番軽いバリオン(奇数個のクォーク)であるから、それが崩壊するとは「バリオン数自身が消滅すること」である。クォークとレプトンを同じ土俵に並べる大統一理論ではバリオン数は完全には保存しない。そこで1980年代初めにカミオカンデ(→「スーパーカミオカンデ」)をはじめ、いくつかのグループが陽子崩壊の観測に挑戦したが、いまだに発見されておらず、寿命は1033年以上である。超対称性があれば、陽子崩壊の寿命の推定は理論的に長くなる。宇宙での物質反物質非対称性の説明には、サハロフの三条件が示すように、バリオン数非保存とCP対称性の破れが必要である。