順礼とも書く。信仰を深め功徳を積むための修行として、聖地や霊場を順に参拝する宗教行為。キリスト教のエルサレムやサンティアゴ・デ・コンポステラ、イスラームのメッカ、仏教のブダガヤやクシナガラ、ヒンドゥー教のベナレス(ワーラーナシー)、これらはそれぞれの宗教にとって最大の聖地である。日本では、平安時代後期に熊野三山信仰が貴族から民衆の間に流行して熊野詣が盛んになり、12世紀には熊野那智の青岸渡寺に始まり、奈良・京都の古寺など近畿一円を巡り、美濃国(岐阜県)谷汲の華厳寺に終わる西国三十三カ所(観音霊場巡り)が生まれた。室町時代頃に始まり、江戸時代に盛んになる四国八十八カ所は弘法大師(空海)ゆかりの霊場巡りで、特に遍路(辺路)という。
巡礼の装束は白衣をまとって笈摺(おいずる)をつけ、菅笠をかぶり、手に金剛杖を持つ。四国遍路では杖が弘法大師その人で、笠や杖に「同行二人(どうぎょうににん)」と記して弘法大師と二人連れで巡り歩く。遍路の道筋には、善根宿・接待宿と称して遍路に一夜の宿を無償で提供したり、接待といって食物や金銭を遍路に喜捨したりして、功徳を施し善根を積む習俗が生まれていった。最近では、巡礼・遍路が雑誌で特集を組まれたり、テレビで報じられたりして、活況を呈している。病気平癒の祈願や近親者の供養などという信仰上の目的ばかりでなく、日常生活から離れて、心の安らぎを求めたい、自然の中を歩きたいといった個人的な願望が現代の巡礼・遍路の特色になっている。