江戸三座の一つ中村座(幕府により公式に芝居興行が許されていた。ほかに市村座・森田座がある)の座元(オーナー)の名跡。1950年に受け継ぎ、役者の名として大きくしたのが、戦後の名優の一人として数えられ文化勲章を受章した17代目(1909~88)。その長男(1955~2012)が2005年に前名の勘九郎から18代目を襲名。父譲りの芸域の広さと芝居のうまさに加え、野田秀樹演出の「研辰の討たれ(とぎたつのうたれ)」「野田版 鼠小僧」、コクーン歌舞伎、仮設劇場として再現した平成中村座での公演などの果敢な挑戦で人気が広がり、東京・浅草での「お練り」、大阪での「船乗り込み」などで話題を盛り上げ、歌舞伎ルネサンスの一翼を担った。ジャンルを軽々と越境するフットワークの良さとメディアへの露出でも群を抜き、従来の枠組みや規範が流動化し、新たな可能性への期待と変質の不安をはらんだ21世紀歌舞伎界を象徴する存在として将来を嘱望されたが、12年12月5日、57歳で死去。現在は、長男の6代目中村勘九郎(1981~)、次男の2代目中村七之助(1983~)が、父の衣鉢を継ぐべく奮闘している。