参議院(参院)が衆議院(衆院)の可決した法案を受け取った後、休会中を除き60日以内に議決しないとき、憲法の規定により、衆院は参院がその法案を否決したとみなすことができる。60日ルールなどと呼ばれることもある。みなし否決を発動すると、衆院は出席議員の3分の2以上の多数で衆院可決案を再可決して成立させたり、両院協議会の開催を求めることができる。1952年に2度発動された後長らく用いられなかったが、93年に細川内閣で、政治改革関連法案をめぐる参院の審議遅延に対する対抗策として検討されて注目された。2005年の総選挙で自公連立政権が衆院の3分の2以上の議席を得、かつ07年の参院選で野党が参院の多数派となった「ねじれ国会」下で、みなし否決は与野党の国会戦略を決める重要な制度になった。08年4月福田内閣下で、ガソリン税の暫定税率をめぐる与野党の対立から、56年ぶりにみなし否決により衆院可決法案が成立したほか、08年1月成立のインド洋での海上自衛隊の給油活動のための新テロ対策特別措置法案のように、参院がみなし否決の直前まで審議を遅延させた後否決し、衆院の再可決で成立するケースも生じた。その後の民主党中心の政権下のねじれ国会では、与党が衆院の3分の2の議席を有しなかったためにみなし否決は発動されなかったが、12年に政権に復帰した自由民主党、公明党は衆院の3分の2を握り、再びみなし否決が国会運営上意味をもつことになった。ただし、13年の参院選挙でねじれが解消したので、当面衆院がみなし否決を発動する必要は失われた。(→「衆議院の優越」)