政治資金の問題で、従来は政治家に対する企業献金・パーティー券購入など、政治資金の「入り」に関する問題が再三取り上げられてきたが、2006年以降、事務所費など政治資金の「出」に関する問題が大きな焦点となった。06年12月には佐田玄一郎行政改革担当相が実際には使っていない事務所費経費を計上していたことが発覚して辞任した。07年1月になって松岡利勝農水相や伊吹文明文科相らが事務所を議員会館に置いておきながら無料のはずの光熱水道費を多額計上していたことが判明。松岡氏は「何とか還元水(の装置)をつけている」と弁明したが、それ以上の説明を拒否したまま、5月に東京・赤坂の議員宿舎で自殺した。後任の赤城徳彦農水相にも07年7月、両親の自宅を事務所として多額の事務所費を計上している疑惑が浮上。赤城氏はほとんど説明責任を果たさず、安倍晋三首相は参議院選挙中には赤城氏を擁護したが、惨敗結果を受けて同年8月、一転して赤城農水相を更迭した。09年には小沢一郎、鳩山由紀夫という民主党トップ2人の政治とカネの問題が浮上。小沢代表の政策第一秘書が3月3日、政治資金規正法の虚偽記載の疑いで逮捕されたため、小沢は代表を辞任し、鳩山に交代した。鳩山代表には死亡した人の名前を借りて献金したことにしていた「故人献金」問題が浮上。9月の首相就任後、母親からの9億円以上の資金提供が判明。鳩山の公設第一秘書が12月24日在宅起訴された。10年に入って再び小沢幹事長の西松建設からの裏献金などに捜査の焦点が移り、小沢の秘書だった石川知裕衆議院議員らが1月16日逮捕されたものの、小沢は不起訴となり幹事長を続投した。通常国会は「政治とカネ」問題の追及一色になった。検察審査会は4月27日「起訴相当」との議決を公表した。鳩山首相は6月2日、退陣表明のさい「政治とカネ」の問題も理由に挙げ、小沢幹事長も辞任することを明らかにした。これで政治責任追及はいったん沈静化したが、検察審査会が10月4日「起訴相当」の2度目の議決を発表したため、野党は小沢の証人喚問を求めた。民主党は臨時国会中は応じず、閉幕後の12月、政治倫理審査会への自発的な出席を要請し、応じなければ議決する構えで岡田克也幹事長と菅直人首相(代表)が相次いで小沢を説得したが、不調に終わった。その後、小沢が翻意し、政倫審に出席する意向を表明したものの、実際には行われなかった。小沢は検察審査会の2度の「起訴相当」の議決により11年1月、強制起訴された。小沢の秘書だった石川知裕ら3人は9月の判決で有罪となり、小沢本人は12年4月に東京地裁で、11月に東京高裁でいずれも無罪となった。石川ら3人は13年3月、東京高裁で控訴棄却、有罪の判決を言い渡された(→「陸山会事件」)。東京地検は同年9月、徳田毅衆議院議員(鹿児島2区)に絡む医療法人徳洲会による買収など選挙違反事件の強制捜査に乗り出し、11月には徳田の姉など6人が逮捕された。その捜査過程で猪瀬直樹東京都知事に対し、12年12月の都知事選の直前に徳洲会側から5000万円を受領していたことが暴露され、都知事辞任に追い込まれた(→「徳洲会事件」)。14年9月の内閣改造で入閣した女性5閣僚のうち、小渕優子経済産業相は後援会による観劇会の収支のつじつまが合わなかった問題で、松島みどり法相は後援者にうちわを配布した問題で、同年10月20日閣僚を辞任した。東京地検は松島については不起訴を決めたが、小渕については後援会事務所を家宅捜索するなど強制捜査に乗り出した。