原子炉が運転されている場合、発生する中性子によって冷却材である水が分解され、水素と酸素が発生する。水素は爆発する危険があるので、通常運転時に発生した水素は水素再結合器によって再び水に戻される。事故が起きて、原子炉の温度が上昇し、約850℃を超えるようになると、燃料棒(→「燃焼集合体」)の材料として使われているジルコニウム(zirconium)が水と反応する。そのときに大量の水素が発生するうえ、その反応が発熱反応であるため、一度反応が始まってしまうと温度が上がり、さらに反応が激しくなるという悪循環となる。沸騰水型炉(BWR)の場合、原子炉圧力容器の外側の原子炉格納容器は窒素で満たされており、仮に水素がその中に漏れ出てきても水素爆発をする可能性はない。しかし、2011年3月11日の福島第一原子力発電所事故のときには、格納容器自体が破損、あるいは漏洩のため、外部に水素が漏れてきた。格納容器外部には空気が存在しており、空気中には酸素が存在しているため水素爆発が起き、原子炉建屋が吹き飛ばされた。加圧水型炉(PWR)の場合、格納容器は空気で満たされており、1979年に起きたアメリカのスリーマイル島原子力発電所(TMI ; Three Mile Island nuclear power plant)の事故のときには、格納容器内で水素爆発が起きた。しかし、爆発に関与した水素の量が少なく、またTMI原発はハリスバーグ空港の近くにあり、格納容器が頑丈に作られていたことが幸いして、格納容器が破壊されずに済んだ。