福島第一原子力発電所事故を収束させるため、東京電力が2011年4月17日に発表した「東京電力福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋」の通称。13年6月27日に改訂された。「放射線量が着実に減少傾向となっている」ことを「ステップ1」、「放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている」ことを「ステップ2」と、目標を二段階に定めた。当時、東京電力は原子炉の炉心にはまだ約半分の水が残っており、メルトダウンは起きていないとしていた。そのため、原子炉を「冷温停止(cold shutdown)」させることを目標に掲げた。冷温停止は炉心が原子炉圧力容器の中にあり、その圧力容器の中に水を蓄え、その水の温度を100℃以下にすることをいう。水が100℃以下になるのであれば、1気圧の下で沸騰をくい止め、安定に炉心を冷やせる。しかし、福島第一原子力発電所の事故の場合、同年5月に東京電力が原子炉建屋内に入り、原子炉水位計を調整しなおしたところ、炉心にはすでに水がなかったことや、炉心がメルトダウンしてしまっていることが判明した。沸騰水型炉の場合、メルトダウンはメルトスルーに至る可能性が高いし、少なくとも圧力容器が損傷して水が漏洩することは避けられない。その段階で「冷温停止」というテクニカルタームが使えない状態になっていることが分かったが、事故が収束に向かっているとしたい東京電力と政府は同年5月17日に改訂した工程表でも相変わらず冷温停止を目標に掲げ続けた。そして、同年12月には、当時の野田佳彦首相が「冷温停止状態」という言葉を新たに作って、事故の収束をアピールした。しかし、その後も事態は一向に改善されず、溶け落ちた炉心のさらなる溶融を防ぐため、ただひたすら冷却水を注入してきたが、それが地下水と混じってしまい、毎日約400tもの放射能汚染水が増加している。4号機を中心にした使用済み燃料プール内の燃料棒の移動も、4号機については13年11月から始まり、14年11月初めに作業を終えた。今後、1~3号機の使用済み燃料プール内の燃料も移動させる必要がある。それを終えてから、溶け落ちた炉心の回収作業に着手することになるが、東京電力の工程表は次々と改訂され、作業が遅れてきた。