正統派量子力学であるコペンハーゲン解釈(→「量子観測」)の欠点をなくそうとする量子力学理論の一種。1957年、H.エヴェレットの提唱になる。コペンハーゲン解釈では、事物の時間発展の法則は「(1)その事物に対し観測が行われなければ運動方程式(シュレーディンガー方程式あるいはハイゼンベルクの不確定性原理)に従い、(2)観測が行われれば量子観測による波束の収縮に従う」という二本立てになっており、観測(観測器)とは何かについては定義されない。これを避けるため、多世界解釈では「事物も観測器も観測者も含む全系が単にシュレーディンガー方程式に従い、全系として重ね合わせ状態(→「重ね合わせの原理」)が形成され、個々の系の間にはエンタングルメントが形成される」と考える。仮定が少ないという点ではコペンハーゲン解釈より優れている。観測・被観測の区分けの不明瞭さを避ける理論には、他にD.ボームの非局所隠れた変数の理論(nonlocality hidden variables theory)がある(→「隠れた変数の理論」)。