H.ポアンカレは、二次元の曲面をホモロジー群を使って完全に分類した。その後、1904年に出した論文の中で、「単連結な三次元多様体は球面と同相か」という問題を提起した。これが「成り立つ」というのが、ポアンカレ予想である。
この問題はn次元多様体の場合に拡張されたが、まず、60年にn≧5の場合をS.スメールが解決し、81年にM.フリードマンが四次元ポアンカレ予想を解決した。二人はこれにより、「数学のノーベル賞」といわれるフィールズ賞(Fields medal)を得た。この証明の流れは、「数学の問題は次元が高くなれば難しくなる」という直観を粉砕するものである。
これは、空間の次元が高ければ、どんな結び目(→「位相幾何学」)も解けてしまうことに由来する。
この問題に100万ドルの懸賞金がかかったすぐ後の、2003年にロシアのグリゴリー・ペレルマン(Grigory Yakovlevich Perelman)が微分幾何学の道具を用いて解決した。06年にIMU(国際数学連合)は、ペレルマンにフィールズ賞を授与することを決定した。しかし、ペレルマンは「正しいことが認められればよい」として授賞式にも現われず、賞を固辞したという。当然のこととして、100万ドルの懸賞金の受け取り資格も生じるが、それも無視している。そして、公職も辞して、貯金と母親の年金で生活しているという。