世界や人間・人類の迎える最後の出来事、この世の究極的な運命である終末に関する教えであり、特にユダヤ・キリスト教(→「ユダヤ教」「キリスト教」)において特異な歴史観として発展した。終末論は、神の支配・摂理の下での世界の破滅と再生、現在の否定による未来への希望・展望を基本的な要素として構成される。そこには、悪によって支配され苦難を強いられている現在を覆して、新しい世界が樹立されるとする願望、ユートピア志向が反映され、苦難や抑圧の理由を説明するとともに、それに抗する闘争の理論的な根拠を提供した。他方、現状を甘受し諦念する思想ともなった(→「グノーシス/グノーシス主義」)。イスラエル王国時代における苦難や王国の滅亡、捕囚の経験を通して、預言者はこうした現実の苦難を、神に対して罪を犯したイスラエル民族に下された神の罰と解釈し、救世主(メシア)を待望する終末論的な思想が形成され、それが原始キリスト教に受け継がれていった。メシアとして待望されたのがイエス・キリストであり、その十字架上での死、復活、再臨、人類の復活、最後の審判、地上の天国の樹立という一連のプロセスが説かれ、地上の天国「神の国」の樹立を目指す千年王国運動を生み出した。