2011年9月17日から12年1月15日にかけて、1960年代の建築運動メタボリズムを総括する展覧会が東京・森美術館で行われた。メタボリズムは、世界からの注目が高いにもかかわらず、これだけの大規模な回顧展は今回が初めてだろう。この運動は、生物学用語の新陳代謝(メタボリズム)を主要なコンセプトに掲げたように、建築や都市が不動ではなく、各部分を取り替え可能にすることを主張した。展示は、戦時下の都市計画から始まり、丹下健三(たんげけんぞう 1913~2005)の戦災復興計画、広島ピースセンター(1958年)や東京湾を横断する東京計画1960を経て、60年代に一気にメタボリズムが花開く状況を紹介する。戦前と戦後を単純な断絶とみなさず、大きなビジョンの国土計画の連続ととらえる視点は、企画監修にかかわった八束はじめ(やつかはじめ 1948~ )の著作「メタボリズム・ネクサス」(2011)と共通する。黒川紀章(くろかわきしょう 1934~2007)や菊竹清訓(きくたけきよのり 1928~2011)らが描いたSF的な空中都市や海上都市のイメージは、当時の爆発的な人口増加と経済成長を背景に生まれたものであり、前衛的な建築デザインは、1970年の日本万国博覧会(大阪万博)のパビリオンなどで実現された。関連企画では、この運動に興味をもつレム・コールハース(1944~)、メタボリズムのDNAを受けた若手建築家らを集めたシンポジウムなども行われている。東京・六本木ヒルズの屋外では、黒川紀章の代表作、中銀カプセルタワー(1972年)のモデルルームも展示されたが、会期終了に彼が設計した埼玉県立近代美術館への寄贈が決定し、現代建築の保存にも貢献した。