ウラン燃料用に設計された現在の原子力発電所では、炉心全体の3分の1にしかMOX燃料を装荷できないが、Jパワー(電源開発株式会社)が青森県大間にて炉心全体にMOX燃料を装荷するフルMOX炉(full MOX core ABWR〈ABWR ; advanced boiling water reactor 改良型沸騰水型炉〉 138万kW)を計画した。基本的な仕様は、柏崎刈羽原子力発電所6~7号機と同じだが、炉心全体にMOX燃料を使えることが最大の特徴。敷地として予定した場所のうち、原子炉を設置する予定地を買収できなかったため、原子炉建屋を南に200m移動させることで、買収できなかった土地をかろうじて避けて、建屋を配置した。いまだに買収できない民有地が敷地内、それも原子炉建屋の近傍にあるという、世界にも類を見ない立地になっている。一方、イギリスの投資ファンド、ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスターファンド(TCI ; The Children’s Investment Master Fund)が07年春に筆頭株主となり、資本効率の改善に乗り出した。TCIは株比率を20%まで引き上げようと外国為替管理法に基づいて経済産業省に承認も求めたが、もしそうなれば、採算ベースに乗らないプルサーマルはできなくなる可能性があり、08年5月、「原子力は純粋民間事業ではなく、国家の問題」として却下された。11年3月の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)により発生した福島第一原子力発電所事故の影響を受けて建設が休止したが、12年9月28日に建設が再開された。新規制基準への適合審査を受けねばならず、運転開始のめどは立っていない。