物質の光応答における位相拡散(デコヒーレンス)時間を測定する手法。原子、分子、イオンは光を当てるとその位相情報も記憶するが、永遠ではない。その記憶の減衰時間は「T2」と書かれ、横緩和定数(transverse relaxation constant)と呼ばれており、この時間以内なら、量子リピーターの手法を用いることなく、量子情報を記憶できる。ところが原子(あるいは分子、イオン)が単体として存在せず、物質中にあるとき、周りの他の原子との位置関係が各原子によって異なるため、その影響により、T2よりはるかに短い時間で位相記憶をなくす。これは見かけ上の記憶消失なので、ある時点ですべての原子の位相を反転してやると、見かけの位相拡散は逆に収束に向かい、同じ時間が経過したとき、完全に位相は元に戻り、各原子の純粋な位相拡散だけが残るため、T2を正確に測定できる。位相の反転は「πパルス」と呼ばれる光パルスを照射することにより行う。これがフォトンエコーである。量子情報処理においては、この手法を利用して物質の見かけの位相拡散をキャンセルし、本来のT2の限度の目いっぱいまでを量子メモリー(quantum memory)として利用することも指す(→「量子メモリー」)。