4年に一度の統一選挙
ちょうど今から60年前の1947年4月、新しい憲法が5月3日に施行されるのを前に、国・地方の新政治体制を整えるための選挙が、全国で一斉に実施された。都道府県知事および市長・東京特別区長は5日、参議院議員は20日、衆議院議員は25日、都道府県・市区町村議会議員は30日に投票が行われた。このとき、地方で選出されたのは、46知事(沖縄県はまだ米軍統治下だった)、211市長、1万210町村長であった。憲法および地方自治法が定める、長の公選制が初めて実施されたことでも歴史的なできごとだった。
このときの選挙を第1回統一地方選挙として、4年ごとに一斉に選挙を行うこととなり、2007年4月8日(都道府県および政令指定都市)と同月22日(市区町村)に、第16回の統一地方選挙の投票が行われた。
減少する統一選挙自治体
第1回の統一選挙後、知事・市町村長の死亡・辞職・解職、議会の解散請求や自主解散、議員解職などにより、しだいに選挙期日がバラバラになっていき、今回の選挙では13知事(47人中)、4政令指定都市市長(17人中)、96市長(765人中)、13東京特別区長(23人中)、155町村長(1022人中)のほか、議会議員選挙を合わせて1120の選挙が実施された。これは全体の29.8%に過ぎず、統一選挙方式で行う意義が薄れているとの指摘もある。統一で行う選挙が減少しているのは、上で見た理由のほかに、市町村合併に伴って、新合併時に選挙を行う自治体が続出したほか、市町村数そのものが減少したことも影響している。前回03年統一地方選挙では、600を超える首長選挙、1600議会選挙が行われていたが、4年間で半数になった。
戦後最低記録が続出した投票率
統一地方選挙における投票率はほぼ一貫して下降傾向にあったが、今回の選挙ではついに多くの県で戦後最低投票率を記録した。知事選挙では、1951年の82.6%をピークに、91年には54.4%まで下がった。このため、公職選挙法を改正して、投票時間を2時間延長することで投票率の上昇を図った結果、99年の第14回統一選挙では、ほとんどの選挙種別で投票率が回復した。
しかし、今回、知事選挙の投票率は、東京ほか3都県で伸びたものの、岩手・島根・佐賀・大分で戦後最低になった(知事選平均54.9%)。また、選挙後半の市長選でも51年の90.1%をピークに、近年では60%前後で低迷していたが、今回53.6%と、ついに過去最低を記録した。
官僚出身目立つ知事選挙
知事選挙は、東京都をはじめとして13都道府県で行われた。全般的に争点のはっきりしない知事選挙であったが、選挙結果は官僚出身知事の進出が際立った。13知事選で当選した新人知事4人は、いずれも官僚出身で、再選されたものを含めると、改選13知事のうち、じつに10人が元官僚である。これで、全国47知事のうち29人(61.7%)が元官僚で占められることになった。今回改選(13知事)の残り3人はすべて元衆議院議員なので、結局13知事すべてが国の政・官経験者ということになり、地方政治の衰退を物語っている。
また、若手知事の増加も今回の選挙の特徴で、4年前には5人しかいなかった40歳代知事が、今回の選挙の結果9人に増えている。これに伴って、知事の平均年齢は58.8歳になった。
政党離れの首長選、政党化する議会選
これまで首長選挙で主流だった、各政党が相乗りして有力候補を当選させ、議会内与党として振る舞うパターンが減少し、いずれの政党の推薦も受けない首長が増えた。今回、政党の推薦・支持を受けずに当選した市長は53人で、当選者の55%を占めた。4政令指定都市市長選での相乗り候補はゼロ、競争選挙となった77市長選のうち、相乗り候補は21人(うち18人が当選)にとどまった。99年選挙では、12知事選のうち10人の相乗り候補が当選したが、今回は13知事のうち相乗りは2人だけ。
一方、これに対して議会議員選挙では無所属候補の苦戦が目立った。都道府県議会議員選挙では、無所属議員が前回より104人減となり、市議選においても全議員に占める割合を、前回の65.5%から63.3%へと減少させた。市町村合併による定数減が当選ラインを押し上げたことに伴って、無所属議員が苦戦を強いられることになった。
首長・市町村議選トピックス
女性議員は選挙のたびにその数を増やしているが、今回の市議選において1122人(全議員の14.0%)が当選し、過去最高となった。市長選挙では国立市の上原公子市長が引退、木津川市長に河井規子氏が当選したため、現職市長は選挙前と同じ8人。今回の統一地方選挙後半戦の話題をさらったのは、財政再建団体となった北海道夕張市長選挙と、銃撃を受けて選挙期間中に現職候補者が死去した長崎市長選挙であった。
宮城県加美町では、現職町長の引退で、無所属新人5人が立候補して接戦となり、投票の結果、いずれの候補も法定得票数である「有効投票の4分の1以上」に達しなかったため、再選挙となった。また、愛知県豊山町議選(定数14)では、2人の候補が同数で14位になったため、くじ引きで当選者を決めるということが起きた。
選挙で示される住民の意思
全般的に争点不在の統一地方選挙であったが、高レベル核廃棄物処分施設の候補地に応募して民意を二分していた高知県東洋町の町長選挙では、応募撤回を訴える候補が圧勝して町民の反対意思を貫いた。地域の未来を決める判断を住民の意思に問う地方選挙の意義は決して小さくない。