草食系男子は“受け身”が基本
「交際中のカレが、いつになってもプロポーズしてくれない」「私は女として付き合っているつもりなのに、カレは手も握ってこない」2~3年前から、そんな悩み相談を受ける機会が増えた。声の主は、20代~30代半ばの女性、問題の“カレ”の多くは、「草食系男子」だ。
仕事や消費に欲がない、草食系男子。何事にも押しが強い「肉食系」とは対照的に、草食系の恋愛や結婚は、大半が「受け身」だ。女性にまったく興味がないのではない、でも恋愛がすべてでもない。
ある結婚紹介所の調査によると、20歳の時点で「カノジョがいない」男性は、全体の7割。バブル期の名残の1996年に比べて、「カノジョなし」が2割以上も多い。しかもそのうち3割が、「別にカノジョは要らない」と言い切る。
彼ら草食系は言う。「もし気になる子がいても、自分からは告白したくない」「できれば、向こう(女性)から来て欲しい」と。
恋愛で傷つくのが怖いから
なぜか? ひと言で言えば「傷つきたくない」「傷つくのが怖い」のだろう。とくに20代男性は、「受験世代(30代半ば~40代)」より下の世代。一人っ子も多く、子どものころから競争を強いられてこなかった。だから、失敗や屈辱を味わった経験も少ない。バブル期の大ヒットドラマ「101回目のプロポーズ」(フジテレビ系)のように、フラれても立ち上がって101回プロポーズするなんて、考えられないと言う。右肩上がりだったバブルの原体験も、ほとんどない。物心ついたころ、すでに日本は混迷の時代を迎えていた。先行き不透明、だから消費にも慎重で、貯金に関心が高い。何事にも「攻めるより守る」ほうが得意、それが草食系の特徴だ。
恋愛や結婚についても、例外ではない。昨今の「婚活」ブームで、「20代のうちに結婚したい」と考える女性は8割を超えるのに、男性、とくに草食系は結婚を焦らない。女性と違って「出産」というタイムリミットがない分、「結婚はしたいけど、まだ先のこと」と悠長に構えてしまうのだ。
エッチは恋愛の必須項目ではない
カノジョとの「エッチ(SEX)」も、恋愛の必須項目とは考えない。20代カップルのうち、1カ月以上SEXがない「セックスレス」男女の割合は、約2割。筆者が取材しても、「ラブホテルで、カノジョと一晩中ゲームだけやって帰ってきた」といった声がポンポンと飛び出す。最初は「若いのに、それで平気なのか?」と疑問だった。だが平気かどうかはともかく、草食系男子は「欲望のままに生きる人間」を嫌う。最大の理由は「反バブル」、物欲、金欲、恋愛欲のイメージが強いバブルの時代を、驚くほど否定的に見ている。「是が非でもエッチしよう」なんて価値観は、己の美意識が許さないのだ。
男女平等主義が当たり前
90年代以降、「男女平等」の教育を受けて育ったのも大きい。バブルの時代は、まだ「雇均法(男女雇用機会均等法)」の施行(86年)直後で、女性が一生働ける場は少なかった。「3高(高学歴、高年収、高身長)」の男性をつかまえて「寿退社」をしたがったのも、多くの女性が、職場の華でいるしかなかったからだ。でも、草食系男子が育った時代は違う。学校でも職場でも、表立った男女差別は禁止され、女性も堂々と権利を主張するようになった。20代の6割以上が「デートでもワリカン」なのも、若い女性が男性の「上から目線」を嫌うから。「おごったぐらいで偉そうにしないで」「それぐらいなら私も払う」といった感覚だ。
だから草食系男子は、女性におごらない。クリスマス前だからといって「よし!」と意気込んで高級ホテルを予約したりもしない。必要以上にカッコつけたり、女性を見下さない分、何事にも自然体で「平等でいよう」と考えるわけだ。上の世代と違って、年上女性や高収入女性との結婚に抵抗がないのも、平等意識が強いからだ。
結婚相手としてはむしろオススメ
筆者は独身女性に、「草食系男子は『恋愛』相手には物足りないかもしれない。でも『結婚』相手にはオススメですよ」と話すことが多い。それは草食系の多くが、旧来の「男たるもの」論に振り回されず、結婚後も自然体で、男女平等の夫婦生活を実践しようと考えているから。結婚後、妻と家事や育児を分担するのは当たり前、料理や掃除にハマる草食系男子も数多い。しかも筆者が拙著で「イエラブ族」と呼んだように、彼らの多くは「家」や「家族」をとても大事にする。たとえば「母の日」にプレゼントする男性は、20代以下で65%。草食系に限れば、もっと多い。そのせいで、いまや母の日市場はクリスマス市場を上回る5000億円市場にまで膨らんだ。
もともと恋愛にガツガツしない、草食系男子。多くが「親に孫の顔を見せてあげたい」と答えるから、単なるSEXには消極的でも「子作り」には積極性を見せる。家族を大事にするから、浮気の確率も低いだろう。結婚相手としては、肉食系より理想的だ。
草食系男子の攻略法
ただし、注意すべき点も2つある。1つは「草食系=男女平等主義」であること。彼らは家事や育児を分担する一方で、妻にもある程度の収入を求める。「結婚後は専業主婦になりたい」と強く希望する女性には、あまりお薦めしない。注意点のもう1つは、「草食系=受け身」であること。恋愛や結婚にスローペースだから、「すぐにでも結婚したい」と考える「アラサー(アラウンド30。30歳前後)」女性には、頭の痛いところだ。
ではどうすれば、草食系男子は恋愛や結婚に「本気」になるのか?
即効性を狙って、胸元の空いたワンピースや超ミニスカートで性欲をあおる女性もいるが、これは逆効果。草食系はドキッとする自分を嫌うから、性欲をあおられると、むしろ「引く(気を削がれる)」と言う。
即効性が高いのは「親」、とくに「母親」を攻めることだ。既述の通り、草食系男子は家族と仲がいい。ある調査では、20代男性の4割近くが「悩みを母親に相談する」とまで答えている。そう、こと恋愛や結婚についても母親に相談する男性が、予想以上にいるわけだ。
母親が「今度のカノジョ、いいんじゃない?」「早く結婚しなさいよ」とお尻をたたけば、スローペースの草食系も「そうかな」と重い腰をあげる。攻略すべきは、草食系男子の母。彼女に気に入られれば、たとえ結婚後に夫とケンカしても、百人力だ。