これまで防衛省は航空自衛隊のF35戦闘機から発射する射程500キロの長射程ミサイル「JSM」をノルウェーから輸入。またF15戦闘機から発射する射程900キロの「JASSM(ジャズム)」と「LRASM(ロラズム)」もアメリカから輸入することを決めている。
これらのミサイルを戦闘機に搭載して日本海上空から発射すれば北朝鮮まで届き、東シナ海上空から発射すれば中国まで届く。まさに敵基地攻撃の要となる武器類といえる。
「宇宙の平和利用」は過去の遺物に
防衛省は今回の12式地対艦誘導弾のほかにも3種類の長射程ミサイルの開発を進めている。
装備化が決まっているのは、離島に上陸した敵部隊を遠方から攻撃するための「島嶼防衛用高速滑空弾」だ。
自衛隊初の地対地ミサイルで、防衛省は「他国に脅威を与えないため射程は400キロ程度にする」と説明しているが、わが国はロケット大国でもある。射程を延ばすのは、そう難しくない。
宇宙と大気圏の境目を超音速で飛翔し、最後は変則的な飛び方をして目標に落下する。その飛び方はロシアや中国の新型ミサイルにそっくりだ。防衛省は早期配備型を2026年度ごろに、能力向上型を28年度以降に配備する予定でいる。
実は防衛省が防衛庁だった2004年、同じ性能のミサイル研究を次期の「中期防衛力整備計画」(2005~09年度)に盛り込もうとしたことがある。
与党の安全保障プロジェクトチームへ説明する中で、防衛庁は「離島を侵攻された場合の反撃用で、射程は300キロ以内。他国の領土には届かず、攻撃的な兵器ではない」と理解を求めた。
これに対し、公明党の議員から「あまりにも唐突だ」「日本の技術をもってすれば射程を延ばすのは簡単で、近隣国に届くものにできる」との批判が噴出して了承されず、削除したいきさつがある。
「島嶼防衛用高速滑空弾」の開発にあたり、防衛省は自民党に続いて公明党にも説明をしたが、特に異論は出なかった。15年余のうちに公明党の軸足が動いたと考えるほかない。周辺国をみれば、武器の高性能化はやむなしというのだろうか。
もはや「宇宙の平和利用」は過去の遺物になろうとしている。専守防衛の歯止めなど、どこにもないかのようである。