唯一の日本人パイロット、目指すはチャンピオン!
もちろん、我らが日本のエース、室屋義秀(43歳)もそのひとり。大学のグライダー部出身で、その後独力で曲技飛行の腕を磨き、この舞台にたどり着いた彼のキャリアは、レッドブル・エアレースでも異色だが、そんな苦労が刻まれた「大人の魅力」では、個性的な外国人パイロットたちに全く引けを取らない。初の母国開催となった15年の千葉大会(第2戦)では、待望の新型機を投入し、1回戦のラウンドオブ14で全体のトップタイムをマークする大健闘。
残念ながら、続くラウンドオブ8では「オーバーG」(最高重力加速度が規定の10Gを超えること)でまさかの失格。決勝進出を果たすことはできなかったが、15年シーズンの後半には2度の3位表彰台を得て、年間ランキングでも6位を獲得。今や名実ともに有力パイロットのひとりと目される存在になりつつある。
新型機の操縦性にも慣れ、チーム体制も充実した16年は「いよいよ勝つための準備が整った。毎戦、表彰台を争うつもりで戦いますよ」と明言する室屋。
16年開幕戦のアブダビ(UAE)、2戦目のシュピールベルク(オーストリア)では、機体のトラブルや新しいGセンサーの不調などで思うような戦いが出来なかったものの、6月4~5日の第3戦千葉大会では、失格に終わった15年の雪辱を果たすため、本拠地の福島で万全の準備とトレーニングを続けてきた。
室屋と同じ09年デビューのマット・ホール(オーストラリア、44歳)が15年、2勝を挙げて年間ランキング2位となり、同じく同期のマティアス・ドルダラー(ドイツ、45歳)が16年第2戦で初勝利を飾るなど、同年代のライバルたちが活躍を見せ始める中で、母国、日本でのレースに賭ける気持ちは並々ならぬものがあるに違いない。
「究極の飛行機野郎」たちが、自らの経験と飛行技術の全てを賭けて、大空を舞台に火花を散らす究極の3次元モータースポーツ、レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ。
果たして日本期待の室屋は幕張の空に理想の飛行ラインを描き、悲願の初勝利を手にすることができるのか? その戦いの火ぶたが、間もなく切って落とされようとしている……。