日弁連が勧告を行っても、すぐに同性婚ができるようになるわけではありませんが、同性婚の実現に向けた議論にはなっていくし、仮に同性婚に関する裁判が起きたときの拠り所にもなると思います。この申し立てを応援するオンライン署名も、「Change.org」という署名サイトで募っています。
世界で初めて、同性同士の登録パートナーシップ法ができたのはデンマークで、1989年のことでした。その後、同性婚も法制化されています。登録パートナーシップ法の成立から数えれば、もう27年。つまり、デンマークで27歳以下の人は、生まれたときからそういう法律がある。それってやっぱり、全然違うと思う。
東 生まれたときから、異性愛も同性愛も当たり前、ということだものね。
増原 だから、今起きている社会の動きは、もちろん私たちにもいろいろなメリットがあるけど、これから生まれてくる子どもたちの意識にすごく影響すると思います。
東 今は小さな一歩でも、20年後にはすごく変わってくるはずですね。法律で認められないから自分はダメだということじゃないのはよくわかってるけど、やっぱり認められていくことって素晴らしい。それは私の価値観や人生観に大きく影響しています。「私、同性と結婚してるんです」と当たり前に自己紹介できる社会にしていかなければね。
私は20代から30代の、ちょうど結婚や家族について考える時期に、結婚式やパートナーシップ証明書取得などの出来事が経験できて、本当によかったと思っています。そういう経験をする中で、何年もかかって「私は変じゃない」と思えるようになったけど、残念ながらみんなにそういう機会があるわけじゃない。
だから伝え続けたいのは、あなたは本当に変じゃないんだ、たまたま数が少ないだけなんだ、ということ。もう生きていけないと思うときもあるかもしれないけど、男の人が好きでも女の人が好きでも、自分が男の子だと思っても、女の子だと思っても、どっちでもないと思っても、恋愛や結婚をしてもしなくても、本当に変じゃない。今は苦しくても、いつか必ず居場所を探せるし、見つけられるから、あなたは一人じゃないんだって伝え続けていきたい。
LGBTへの差別を禁止し理解を促進する法律 や同性婚の法律ができても、それがゴールではありません。本当の意味で違いを受け入れ合える社会になるまで時間はかかると思うけど、それが実現するまで、一生懸命、私が伝えていきたいことです。
同性パートナーシップ条例
男女平等や、性別にとらわれない多様な個人の尊重などを目的に制定された東京都渋谷区の条例。2015年3月31日に同区議会で可決、翌月1日施行。条例では、LGBTと呼ばれる、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなど性的マイノリティーの人権尊重が掲げられ、同性のカップルを「結婚に相当する関係」と認める「パートナーシップ証明書」を発行することが定められている。
パートナーシップ証明書
東京都渋谷区の「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」(2015年4月施行。通称・同性パートナーシップ条例)に基づき発行される証明書。区内在住の20歳以上の同性カップルを対象とし、共同生活の合意事項についての公正証書を作成していることなどを条件に発行。区民や事業者には、証明書を持つカップルを夫婦と同等に扱うことを求める。賃貸住宅への入居などで家族として扱われることが想定されるほか、家族向け区営住宅に夫婦として入居することが可能になる。また、職場での不当な差別など、条例の趣旨に反する行為があり、区長の是正勧告に従わない場合には、事業者名を公表することができる。ただし、証明書に法的な効力はない。
LGBT
【L】レズビアン(女性同性愛者)、【G】ゲイ(男性同性愛者)、【B】バイセクシュアル(両性愛者)、【T】トランスジェンダー(生まれた時に法律的、社会的に割り当てられた性別にとらわれない性別のあり方を持つ人。一部の性同一性障害者を含む場合がある)の頭文字をとった単語で、セクシュアル・マイノリティー(性的少数者)の総称の一つ。
公正証書
公証人(司法試験合格後、司法修習生を経た法曹有資格者から、法務大臣によって任命される国家公務員)が、金銭の貸借、不動産の貸借・売買、離婚の際の財産分与・慰謝料支払約束、遺言、任意後見契約など、民事上の法律行為について、当事者の依頼に応じて作成する公文書のこと。法律の専門家が、法的に明確な形で作成するため、証明力が高い。