燃えないウランであるウラン-238(→「ウラン」)をプルトニウム-239に変換して利用するべく、増殖比(→「高速炉」)を1以上にすることを目標に作られた原子炉。ただ、冷却材に化学的活性が高いナトリウムを用いる他、原子炉の動特性、燃料条件など技術的課題が多い。巨大なタンクの中に原子炉、ポンプ、熱交換器などすべてを格納するタンク型(tank type)を採用して積極的な開発を続けたフランスも増殖炉路線を放棄し、スーパーフェニックス(Super Phoenix 電気出力125万kW、1985年臨界)は廃炉。フェニックス(電気出力25万kW、73年臨界)は長寿命放射性核種(→「放射性同位体」)の核変換処理のためとして閉鎖を免れたが、2009年3月に運転を停止し、廃炉となった。日本の「もんじゅ」(電気出力28万kW)は原子炉容器、冷却材ポンプ、熱交換器を配管で結ぶループ型(loop type)であったが、1995年12月、試運転開始早々にナトリウム漏洩(ろうえい)事故を起こし停止。2003年1月、名古屋高等裁判所から設置許可を取り消されるなど紆余曲折があったのち、10年5月に試験運転を再開したが、その後、燃料交換中継装置を炉内に落下させるという事故を起こした。06年3月に研究成果がとりまとめられた「高速増殖炉サイクルの実用化研究開発プロジェクト」実用化戦略調査研究フェーズIIでは、さまざまな候補が検討されてきたもののナトリウム冷却、酸化物燃料しか選択がなくなった。それでも、炉型は従来のループ型ではなくトップエントリー型(top-entry type)と呼ばれる特殊な構造となり、「もんじゅ」は原型炉としての役割を失った。一方、ループ型の小型の実験炉「常陽」(MK-III、140MW〈メガワット Mは106=100万〉)はプルトニウムの増殖ではなく、超ウラン元素の燃焼など廃棄物処理の研究をしようとしていた。しかし、07年11月、実験装置の一部が破損して炉内に落下、行方不明となるトラブルを起こした。冷却材のナトリウムは不透明であるため、このトラブルを乗り切るのに、多大の資金と年月が必要となり、2015年6月にようやく、燃料交換機能の復旧を終えた。その他、中国で実験炉CEFR(China Experimental Fast Reactor 熱出力65MW、電気出力20MW)が10年7月21日に臨界に達した。今後、出力60万kWの原型炉CPFR(China Prototype Fast Reactor)、出力100万kW以上の実証炉CDFR(China Demonstration Fast Reactor)の建設を検討。インドは04年10月、原型炉PFBR(prototype fast breeder reactor 電気出力50万kW)に着工した。