禁煙外来ってどんなところ?
最近の路上喫煙禁止や施設内禁煙などの流れから、「そろそろタバコをやめたい、やめなければまずい」と焦りを覚えている喫煙諸氏も多いことだろう。こうしたときに力になってくれるのが医療機関の「禁煙外来」である。禁煙外来では、禁煙希望の人それぞれに、個性にあったカウンセリングや禁煙補助薬の処方をしてくれる。禁煙治療は、2006年4月から健康保険適用になり、同年6月からはニコチンが含まれる貼り薬タイプのニコチンパッチが薬価収載され、保険で処方できるようになった。他にも飲み薬タイプの禁煙補助薬などもある。飲み薬タイプは、タバコがおいしいと感じなくなり、吸いたい気分が徐々に起きなくなるという特徴がある。このように、「とにかくがまん!」の禁煙は、もはや過去のものとなった。いまや禁煙は、禁断症状で苦しむことなく、気楽な禁煙計画を練ることだってできる時代なのである。
禁煙するときの女性特有の問題
そうはいっても、特に女性の場合、禁煙しようと思ったときにネックになることがある。次に示すのは、あまり知られてはいないが、女性独特の問題といってもいいだろう。ひとつは、女性が禁煙を始めると、一度吸ってしまっただけで「もうダメだ。自分には禁煙なんて所詮無理」とあきらめたり、「私はダメな女」と自己嫌悪に陥ってしまうことがある。しかし、これまで手にしていない何かを手に入れようとすれば、相応の困難があるのは当然のこと。1回くらいの失敗ではめげないという、ある意味、図太さが禁煙成功には大切なのである。自己嫌悪は禁煙成功の一番の敵なのだ。
もうひとつは、身近な男性、彼氏や夫の喫煙である。日本の男性の喫煙率は下がってきたとはいえ、まだまだ他の先進諸国の男性と比べるとダントツに高い。女性がせっかく禁煙にチャレンジしても、家庭で目の前でうまそうにタバコを吸われたら、吸いたくなるのは当然である。したがって、禁煙を始めたら家の中は禁煙にすることが大切である。パートナーには、必ず事前に説明をして協力してもらう必要がある。
禁煙は「良いこと」がいっぱい!
当然、禁煙をすると良いことがたくさんある。がんの心配がなくなった、痰が減った、息切れがしなくなった、などの健康面の改善はもちろんだが、それ以外にも、メリットはたくさんある。例えば昔、接客業の女性から「口臭がきつく、接客の際に心配」と相談を受けたことがある。まず喫煙者は、歯周病にかかるリスクが高いので、歯周病に伴う口臭がある。その上、歯周病にかかってもニコチンの作用で口腔内の血管収縮が引き起こされるため、出血が少なく、かなり進行するまで発見されにくい。喫煙者独特の口臭には、歯周病の口臭に加え、タバコ煙を吐き出すときに肺の奥から吐く息がくさいというものもある。この呼気の悪臭は、うがいをしてもとれないので、接客業の人は要注意である。特に、喫煙直後の呼気のにおいは大変に強いのだが、喫煙者本人はにおいに慣れてしまっていたり、嗅覚が鈍っていることにより気づきにくい。
禁煙すれば、当然、口臭からも解放される。それ以外にも、しわが目立たなくなったり、お肌につやや張りが戻って肌年齢が若返った、化粧ののりがよくなった、肩こりが楽になったなど、「禁煙メリット」を挙げていったら枚挙にいとまがないのである。
禁煙を成功させるコツ
禁煙したくなった場合、自分でできる成功の秘訣が3つある。まず、十分な「動機付け」である。自分なりの禁煙理由をはっきりさせること。このためには、自分にとってのタバコは優先順位がどの位置にあるのかをよく考えることが重要である。これがはっきりすると、喫煙ステージが「無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期」というように上がり、禁煙成功率が高くなることがわかっている。例えば、私の外来では、無関心期の人はダメでも、関心期になれば3割の人が、また準備期にまで達していれば7割以上の人が禁煙に成功している。次に「達成可能な目標を設定する」ことも大切である。まず「3日間は乗り切るぞ」というように、少しの努力で達成できそうな目標を設定し、それをクリアーして成功体験を積むことである。これはスモールステップ法といい、禁煙を成功させるには大切な考え方である。これにより「私だったら大丈夫、やればできる」という感覚、「自己効力感」が育つのである。
3つ目の秘訣は、なぜ上手に禁煙できているのか、理由をよく考えてみること。「うまくいっている理由」を探すことができれば、応用編として「吸いたい気持ち」にうまく対処できるようになり、その積み重ねが自信を育ててくれるはずだ。
禁煙をスタートしたら、ぜひ先に述べた「禁煙メリット」に目を向けていただきたい。努力を伴う行動変容には、引き換えとして良いことが必要である。一所懸命努力しても、良いことがひとつもないままでは続かない。禁煙にも「お得感」が効果的なのである。
そして、もし禁煙に疲れたら、携帯電話の禁煙プログラムや禁煙ゲームなどを試してみるのもいいだろう。禁煙で体調不良になったり、禁断症状が辛いとき、また確実な禁煙を目指すならば、禁煙外来を訪ねてみるのもいい。そこには、あなたの話に耳を傾け、適切な助言をし、ともに喜んでくれる医師がいるのだから。