一方、2007年4月25日、てんびん座の方向の、20.5光年の距離にあるグリーゼ581(Gliese 581)という恒星の周りを回っている惑星を発見、その惑星の一つグリーゼ581cが、ハビタブルゾーン(生命生存領域)の可能性があると、ヨーロッパ南天天文台(ESO)が発表した。
私たちはいつか、地球外知的生命体(宇宙人)に遭遇する兆候を見いだすのだろうか。
生命の材料は星がつくったもの
私たち人類の身体をはじめ、生命を構成する物質、惑星や太陽をつくっている物質は、すべて宇宙空間にある星によってもたらされた元素が基になっている。星はそのほとんどが水素からなるガス球であり、中心部の核融合反応によって輝いている。その反応は、質量が大きい星ほど進み、水素からヘリウム、そして炭素、酸素、マグネシウム、ネオン、ケイ素、鉄などを生み出していく。大質量星は、最後に大爆発を起こし(超新星)、短時間で鉄より重い元素を合成する。自然に存在するすべての元素は、このように星で形成されたものなのである。
「宇宙人をさがせ」プロジェクト
この宇宙には、星の誕生、死という営みによってつくられた生命の材料に満ちている。一定の環境が整えば生命が生まれ、知的生命体にまで進化し、通信手段を持ち合わせている可能性があると考えられるようになった。1960年、アメリカの天文学者フランク・ドレイクたちは、宇宙の知的生命体が発する電波を受信する試みを行った。オズマ計画である。成果は得られなかったが、それ以降、地球外知的文明探査(SETI)として、多くのプロジェクトが実践されるようになった。
宇宙の地球外知的生命を考えることは、私たち人類の過去、現在、未来を考える営みでもある。生命の尊厳を探る営みでもある。多くの人々の関心が、広い宇宙に集まっている。
現在、最も大規模なプロジェクトはセチ・アットホーム(SETI@home)で、プエルトリコのアレシボ天文台の口径300m電波望遠鏡で受信した電波を、一般家庭のパソコンの空き時間を利用して解析するグリッドコンピューティングによって、世界中の何百万という人たちが参加している。
宇宙人はいないのかもしれない
セチ・アットホームがかなり広範囲で行われているにもかかわらず、いまだに地球外知的生命の存在はつかめていない。もちろん太陽系の惑星探査等でも、生命の痕跡すら見つかっていない。そもそも生命の発生はあったとしても、知的生命にまで進化する可能性は極めて低いのではないか、という主張が信憑性を帯び始めた。生命が誕生するのに適した環境はハビタブルゾーンと呼ばれ、惑星系における領域は、液体の水が維持できる温度環境とされる。また銀河系における領域は、地球型惑星をつくるのに十分な重元素が形成される環境で、かつ天体の衝突、高エネルギー放射線等の危険性が比較的少ない環境を必要とする。つまり銀河系の中心付近でもなければ、外縁部の方でもない。銀河系中心から数万光年離れた、比較的狭い領域に限られるらしい。
また、銀河系を構成する星のほとんどは、連星系だと考えられる。連星系にある惑星の場合、仮にハビタブルゾーンに存在していようが、その運動はきわめて不安定で、生命の誕生や進化には大きな障害になるという。また、衛星を持たない惑星の運動も不安定で、その自転軸のふらつきは大きな気候変動をもたらす。仮に生命が誕生しても、知的生命体に進化することは困難だというわけだ。地球は、実に幸運な星だったのかもしれない。
たとえ「宇宙人」がいたとして
困難な条件を知ったとしても、地球外知的生命体への期待は大きく、人々の夢はふくらむ。だが知的生命体が、自分たちの存在を明らかにするために、宇宙(あるいは地球)に向けて信号を発信するだろうか。高度な文明を持ち、技術的には可能だとしても、彼らがそのようなエネルギーの浪費をするだろうか。それにもまして、知的生命体からの信号受信は仮定が多すぎ、科学的ではないという指摘さえある。ではどうすべきか。私たちが獲得した観測技術を駆使して、知的生命体が活動をしている証拠(彼ら自身の通信等)、つまり生体反応を受信することである。
私たちの技術力が及ぶ範囲内(技術の進歩とともに拡大できる)の知的生命体存在の有無を、科学的に提示することができるのである。もちろん雑音に埋もれた信号を取りだすのは、至難の業ではあるが……。
科学的な地球外知的生命探査は、宇宙人から抱くイメージとは程遠く、地味で根気の必要な営みである。
アレシボメッセージ
1974年に、アレシボ天文台(電波天文台)から宇宙人へ送られたメッセージの電波信号を図解したもの。縦73×横23、計1679ビットのデータで構成され、知的生命体なら解読できると想定してつくられたメッセージ。上から順に、
(1)1から10までの数字
(2)水素・炭素・窒素・酸素・リンの原子番号
(3)デオキシリボ核酸 (DNA) のヌクレオチドに含まれる糖と塩基の化学式
(4)DNAに含まれるヌクレオチドの数
(5)DNAの二重らせん構造の絵
(6)人間の絵と人間の平均的な身長
(7)地球の人口(42.9億人、当時の世界人口)
(8)太陽系の絵
(9)アレシボ電波望遠鏡の絵とパラボラアンテナの口径
を表している。(Arecibo Message)
セチ・アットホーム
セチ(SETI Search for Extra-Terrestrial Intelligence)は、宇宙から地球外知的生命体の信号を検知する目的で立ち上げられたプロジェクトで、グリッドコンピューティングによる解析が主要であるため、個人でも、ソフトウエアをダウンロードして、パソコンにインストールすれば、プロジェクトに参加がすることができる。(SETI@home)
グリッドコンピューティング
ネットワークを通してさまざまなコンピューターを結んで並列処理を行うことで、あたかもスーパーコンピューターのような処理能力を構築すること。(grid computing)
連星系
二つないしはそれ以上の恒星が重力で結びついて回り合う系のこと。連星系は新星、X線星、激変星などのダイナミックな現象の多くに関与している。(binary system)