地球温暖化の原因は二酸化炭素?
人類による化石燃料の消費が急速に進み、二酸化炭素の放出量が激増したのは、20世紀後半のことである。一方、現在観測されている地球の温暖化現象は、すでに19世紀の初頭から始まっていることを、アメリカ科学アカデミーなどが報告書にまとめている。つまり、人類による二酸化炭素の放出とは無関係に、地球の自然現象として温暖化は起きていると考えられる。二酸化炭素を特別に問題視するIPCC(気候変動に関する政府間パネル)ですら、「20世紀後半の温暖化に限って、二酸化炭素が主因だ」と述べている。たしかに、20世紀後半の温暖化の原因が、人類による諸活動にある可能性は高い。しかし、人類の諸活動には二酸化炭素の放出だけがあるのではなく、原因を二酸化炭素だけに特定することは、果たして正しい観点なのだろうか。
地球は大変複雑な系であり、大気の温度も大きな変動を繰り返してきた。人類が誕生する以前の中生代は、現在よりさらに高温だった。新生代に入っても、大きな氷河期を4回経験し、現在は4番目の氷河期が終わった温暖期にある。現在問題にされている最近150年間の温度増加は0.8℃程度でしかないが、それぞれの氷河期とそれが終わった温暖期の気温には10℃もの違いがあった。それでも、北極の白熊が絶滅したりはしなかった。
原子力は二酸化炭素を放出しない?
かつて、日本の政府や電力会社は「原子力は二酸化炭素を放出しない」からクリーンだと宣伝していた。それが最近では、「原子力は発電時に二酸化炭素を放出しない」に変わったことはお気付きだろうか。原子力発電所を動かそうとすれば、ウラン鉱山でウランを掘ってくる段階から始まって、燃料を作り上げるまでにたくさんの工程が必要で、膨大な資材とエネルギーを投入している。それらは大部分が化石燃料でまかなわれているから、原子力を利用しようとすれば、二酸化炭素を放出してしまうことは当たり前なのである。
そのうえ、原子力発電所自体も鋼鉄とコンクリートの巨大な構造物で、それを建造し、運転するためにもまた二酸化炭素を放出する。したがって、「発電時に」という言葉を追加してもなお、この宣伝は偽りである。もし、科学的に正しくいうのであれば、「核分裂反応は二酸化炭素を生まない」というべきであろう。
原子力は地球にやさしい?
では、核分裂反応はいったい何を生むのか。核分裂生成物、いわゆる「死の灰」である。1基の原子力発電所は、1年運転するごとに広島原爆が生んだ核分裂生成物の1000発分を生む。人類は放射能を作り出す力を持ったが、それを無毒化する力を持っていない。自然にも、放射能を浄化する力はない。したがって、生み出した放射能から生命環境を守ろうとするなら、放射能自体がその寿命によって減るまで隔離する以外にできることはない。1966年に日本で原子力発電が始まって以来、今日までに生んだ核分裂生成物の量は広島原爆120万発分に達する。日本の政府は、それを地下に埋めてしまえば後は何もしなくていいと主張しているが、放射能の毒性が減るまでには100万年かかる。だが、それほどの長期間にわたって安全を保証する力は、科学にはない。もし、100万年にわたって放射能の管理を続けようとするなら、どれだけのエネルギーが必要で、どれだけの二酸化炭素を放出することになるのか、想像を絶する。仮に、二酸化炭素が地球温暖化の主要な原因だとしても、原子力はよりよい選択といえるだろうか。
原子力と温暖化、もう一つの相関!
現在標準的となった100万kW(キロワット)級の原子力発電所では、原子炉の中で300万kW分の熱が発生しており、その3分の1にあたる100万kWだけが電気を作ることに使われている。では、残りの200万kW分の熱がどうなるかというと、温廃水として海に捨てている。放射能の放出についてはさておき、100万kWの原子力発電所の場合、1秒間に70t(トン)の海水の温度を7℃上げる計算となる。現在、日本には55基、電気出力で約5000万kWの原子力発電所があり、それが流す温廃水の総量は1年間に1000億tに達する。これは、日本の河川の総流量に相当する量の海水を、約2℃も温かくしていることに相当する。地球上の二酸化炭素のほとんどは、海水中に溶け込んでいるわけだが、サイダーを温めれば二酸化炭素の泡が出てくるのと同じことが、その規模で起こることになる。
なお、火力発電では50%以上の熱効率を実現しており、海に捨てる熱はずっと少ない。
生命・環境破壊の真因は?
人類の諸活動が引き起こした災害には、大気汚染、海洋汚染、森林破壊、酸性雨、砂漠化、産業廃棄物、生活廃棄物、環境ホルモン、放射能汚染、さらには貧困や戦争などがある。そのどれをとっても、巨大な脅威である。温暖化もその一つだとしても、無数にある脅威の一つであり、その原因の一つに二酸化炭素があるかもしれないということである。生命・環境破壊の真因は、「先進国」と呼ばれる一部の人類が、産業革命以降、エネルギーの膨大な浪費を始めたことにある。そのため、環境の破壊に限らず、多数の生物種が絶滅させられたし、今も絶滅されようとしている。地球の環境が大切であるというのであれば、二酸化炭素の放出を減らすなどという生やさしいことではすまない。日本を含め「先進国」と自称する国々が、エネルギー浪費社会を改めることが、何より大切なことである。