安全性への意識の高まり
食品に端を発した“安全性”への意識は、化粧品分野にも確実に波及している。その顕著な例が「オーガニック・コスメ」と呼ばれる「有機栽培された植物を用いた化粧品」の流行だ。化粧品は肌に直接塗布する製品だからこそ、食品と同様の安全性が求められており、しかもアレルギー疾患や皮膚炎など、近年増加傾向にある敏感肌用のスキンケアに対するニーズが、配合成分への関心を喚起。それが美容トレンドを、安全な植物成分を用いているオーガニック志向へと加速させた。オーガニックの認定基準
では、オーガニックと認定されるための基準は、どこにあるのだろうか。日本の農林水産省が定める「有機JAS認定」よると、そのガイドラインは3項目。(1)種まき、または植え付け時より2年以上前から、禁止された農薬や化学肥料を使用していない田畑で栽培していること、(2)栽培期間中も禁止された農薬、化学肥料を使用しないこと、(3)遺伝子組み換え技術を使用しないこと、である。植物の種子から土壌、栽培環境に至るまで、厳しい生産基準が設けられていることが特徴である。また欧米各国では、食品や化粧品など製品そのものに認証を与える「オーガニック認定団体」が基準を明示。フランスの認定機関COSMEBIOによる基準では、完成品の95%以上が天然由来成分から作られていること、アメリカ連邦農務省USDAによる基準では、製品中の有機原料を100%、95%、70%以上の3ランクに分類した基準を設けることなど、より厳密な認証基準を整備しており、化粧品に使用されている化学成分や防腐剤にも強い関心をもつ欧米の女性たちの声に応えてきた。愛用者が増える理由
日本では前述したような化粧品の安全性や、植物エキスならではの豊かな香り立ちからオーガニック・コスメが注目を浴びているが、愛用者が増え続けている理由はそれだけに限らない。化粧品のカナメであるスキンケア効果に秀でていることも着実にリピーターを増やし続けている理由だ。高いスキンケア効果
従来の“天然由来”や“植物派”の化粧品といえば、「なんとなく肌にやさしい」「効き目が穏やか」と、おぼろげなイメージで語られる機会が多かった。それは植物エキスを有効成分として配合しているのではなく、製品イメージとして活用している化粧品も存在するからだ。しかし薬草や花々など植物の恵みを凝縮したオーガニック・コスメは、肌にパワフルに働きかけてエイジングケアを行う。しかもハーブや花々のアロマ効果は、癒やしを求めている現代女性の心を確実にとらえることに成功。その結果、百貨店の化粧品売り場には自然派化粧品を専門に扱うスぺースが設けられ、オーガニック化粧品を一堂に集めた大型イベントも開催。多くの女性誌でもオーガニック・コスメの特集が組まれるようになり、高いスキンケア効果を発揮する機能性コスメとして認知されるようになった。エコ活動への取り組み
加えて、オーガニック・コスメを製造するメーカーの多くが、積極的に環境問題に取り組んでいることも、地球環境に配慮する時代性とマッチした。化粧品の外箱にリサイクル新聞紙を用いたり、スイスのメーカー「ヴェレダ」のように、製品のガラスボトルを回収してキャンドルホルダーを製作するようなエコ活動に協力。また、アメリカのメーカー「エルバビーバ」は、発展途上国の少数民族を援助する人道支援を行うなど、多くの企業が、肌だけでなく地球の美しさを維持するための社会貢献活動を実践。、製品を購入することで、エコ活動にも貢献できるシステムを作り上げている。自然を尊重するライフスタイル
このようにオーガニック・コスメは、人々の肌だけに限らず、地球環境への意識までも“改善”したかのように見える。化粧品の安全性に対する関心は、自然を尊重する意識を育み、地球環境に負荷をかけないライフスタイルへと導いていく。そう考えると、オーガニック志向とは、スキンケアから美容分野全般に広がり、そして本人の生き方にまで影響を与える人生哲学だと言える。肌と環境の双方を美しく整えていくというエコロジー的な美意識。それは、見た目の印象だけでなく心意気までも美しくあるべきという“次世代の美人像”を表しているようだ。