ネットワークAVなら、海外で日本のテレビが見られる!
ネットワークAVの世界でも、その革新的な利便性が評価され、利用者も着実に増えているのが、ソニーの「ロケフリ」こと「ロケーションフリー」です。例えば、日本の会社員が海外に長期駐在となった場合、本人はもちろん、ご家族も、日本のテレビが見たくても、通常は見ることができません。ところが、「ロケーションフリーベースステーション」という発信機器を購入して、日本の自宅のAV機器とつなぎ、インターネット回線に接続しておくと、それが可能になります。海外の地であっても、受信用のロケフリの機器とテレビ、あるいはソニー・コンピュータエンタテインメントの携帯型ゲーム機「PSP」、専用ソフトをインストールしたパソコンで、テレビ放送はおろか、自宅のレコーダーに録画してある映像までも見ることができるのです。リモコンを使うように遠隔操作もできるので、チャンネルの切り替えや録画も自在です。もちろん、無線でも有線でもLAN(ローカルエリアネットワーク)が使えるエリアにいれば、国内での外出時でも同様に役立ちます。再生装置にあらかじめ映像コンテンツのデータを転送しておく必要がなく、その手間や時間も不要なことは、ネットワークAVならではのメリットです。
ただし、インターネット回線は、送信側、受信側のどちらにも、ADSLなどのブロードバンド回線が必要です。注意点としては、送信側にグローバルIPアドレスが必要で、加入しているサービスによっては、別途契約や追加料金が必要になります。
寝室のテレビや書斎のパソコンで、録画映像が見られる!
リビングのHDD(ハードディスク・ドライブ)レコーダーにとりためた映像を、寝室のテレビや書斎のパソコンで見たいとき、従来は、一度、DVDなどのメディアにダビングする必要がありました。当然、それぞれの部屋にも、DVDの再生装置が必要です。しかし現在では、DLNA規格に対応したレコーダーやテレビが発売されています。これらを使うと、LANを通じて、リビングのレコーダーに録画した映像を寝室のテレビで視聴できるのです。DLNAに準拠した製品であれば、録画機と異なるメーカーのテレビやパソコンなども、相互に接続できます。ただし、映像および音声フォーマットの互換性は、保証されていません。機器を購入する際は、DLNA準拠であることに加え、ユーザー自身の目的、画質や音声のチャンネル数など、利用したいフォーマットやファイルタイプの種類を確認し、適合性に注意する必要があります。
出かけずにレンタルビデオ?
ネットワークを通じて映像コンテンツを配信する、VOD(ビデオオンデマンド)というサービスがあります。いわば、出かけずにビデオをレンタルするようなものです。このようなビデオ配信は、一般的に配信サービスと通信インフラ、STB(セットトップボックス)などの受信機がセットになっています。自分が見たいコンテンツをより多く取りそろえている配信サービスを見つけると、必要な通信インフラ、受信設備が自動的に決まります。たとえば、コンテンツが多く代表的な「ひかりテレビ」は、通信インフラにNTTの「フレッツ光」、視聴には専用のSTBが必要です。また、テレビ自体にもともと視聴機能が内蔵されているケースが多い「アクトビラ」のサービスは、通信インフラの制限がないので、敷居が低く感じます。しかし、標準画質で6Mbps以上、ハイビジョン画質なら12Mbps以上の大量のデータを受信しなければならず、安定した通信速度が確保できる通信インフラでないと、画質が低下したり、止まったりと、不具合が生じます。
一方、通信インフラや通信速度に左右されずに利用できるのが、1本分のコンテンツのデータをまるごとダウンロードしてから視聴する、蓄積型の配信サービスです。通信速度が遅いと、ダウンロードの時間はかかりますが、視聴時に映像が途切れたり、止まったりすることがないのが利点です。ゲーム機として普及している、ソニー・コンピュータエンタテインメントの「PS3」でも、内蔵のHDDに専用ストアから映像コンテンツをダウンロードするサービスがあります。また、KDDIによる「DVD Burning」は、パソコンにダウンロードしたデータを自分で直接DVDメディアに焼くというサービスで、東芝の一部のDVDレコーダーもこれに対応しています。
製品の完成度と今後
ロケーションフリーはもとより、DLNAではハイビジョンも扱えるようになり、実用的な完成度に達しています。ストリーミング方式のVODは、好きなときに再生を開始したり、一時停止や早送りなども自由です。H.264という高度な映像圧縮技術により、ハイビジョンのコンテンツも増えていますが、通信速度が速い光回線が必須であり、まだすべての家庭で手軽に楽しめるには至っていません。しかし今後、通信速度の向上や、次世代インターネット方式のIPv6によるQOS技術で解決する見込みです。こうした通信インフラの向上は、VODにとどまらず、ハイビジョンをはじめとする、より大量のデータを扱うネットワークAV全般が享受し得る恩恵といえます。DLNA
Digital Living Network Alliance 家電、モバイル、パソコンなどの業界各社などによる団体。家庭内において、デジタル家電機器やパソコンの相互ネットワーク接続を実現するガイドライン(ルール)を策定。
ストリーミング
streaming 映像や音声のデータを、インターネット経由でダウンロードしながら、パソコンなどの機器で同時に再生していく方式。
IPv6
Internet Protocol Version6 パソコンの数の増加と、インターネットを介するさまざまな機器の増加により、現状のインターネットプロトコル(通信規約)方式であるIPv4で生じているアドレス不足や、通信が片方向通信であることによる非効率を改善するために開発されている、次世代のインターネットプロトコル。
QOS
Quality of Service 映像や音声のデータ伝送に際して、通信の停止などが起こらないように、特定の帯域を常に確保し、通信速度を保証する技術。