まず暖房能力!「暖房はエアコンで」の時代だ!
エアコンを設置していても、冬場は灯油で暖を取る人は少なくないようです。灯油の方が燃費が良くて暖かいとのイメージが定着しているからかもしれません。しかし、ここ10年でエアコンの暖房能力は目覚ましく進化していて、一般的な家庭では、灯油よりもエアコンによる暖房の方がお得で快適といえる可能性が高くなっています。まず、同じ量の空気を暖める場合、電気ヒーターなどの電気を直接熱に変える暖房は、灯油よりも燃費が割高なのは事実です。しかし、エアコン暖房は、「図表2」にあるように大気の熱を利用するため、消費する電力の何倍もの熱を取り出せるのがミソ。灯油よりも割安になる可能性を秘めているのです。最新のエアコンでは、消費電力の5倍程度の熱が取り出せるものもあり、この場合、筆者の試算では、単純に熱量だけを計算すると、灯油18リットル分に相当する熱量を800円ほどでまかなえる燃費パフォーマンスを発揮します。財団法人日本エネルギー経済研究所の2009年5月の調査によれば、店頭売りの灯油18リットルの全国平均価格は1119円とのことです。
エアコン暖房は、外気温が低下すると効率が落ちる弱点はありますが、灯油暖房に比べて換気にともなう熱のロスが少ない点を考えても有利です。
暖房能力と冷房能力には差がある!
カタログを見ると、「冷房12畳/暖房8畳」のような表記があります。エアコンは冷房と暖房の能力に違いがあるのです。要注意は、一般的に「暖房能力」の方がネックであることです。冷房についての畳数で選んでしまうと、冬場に暖房が追いつかないという失敗に陥ります。「エアコン暖房は今ひとつ…」という従来のイメージも、このあたりから来ているのかもしれません。知れば欲しくなる付加機能
昔からの冷房専用のクーラーは、部屋が冷えるだけのシンプルさで、機能といっても温度設定やリモコンくらいのものでした。それに比べて、最新のエアコンは実に多くのハイテク機能を搭載していて、メーカーごとの特色もあります。知れば欲しくなる機能や、製品選びの決め手となる機能もあります。ではその真価は?フィルター自動清掃
ホコリの侵入を防ぐフィルターを、自動で清掃してくれる機能です。フィルターの掃除をおこたると、1シーズンで10~20%も余計な電気代がかかるといわれているので、ヘビーユーザーには重宝な機能といえます。一方、エアコンの利用を極力控えるユーザーの場合は、フィルターの清掃頻度も低いので、節約できる手間も電気代も微々たるものでしょうから、宝の持ち腐れとなるでしょう。
空気清浄
フィルターによる集塵(しゅうじん)に加え、イオンによる除菌、あるいはアレルゲン、アレル物質などと呼ばれるアレルギーのもととなる物質の抑制をうたう製品が増えています。方式や効果の度合いについては、メーカーによって異なるのが現状です。検討する場合は、カタログの数値を確認し、ご自身で出費に見合うかどうか判断しましょう。
寒くならない除湿(再熱)
原理として、冷房と除湿は同じです。旧来のエアコンは除湿をすると寒くなったものですが、最近のエアコンは室外機で放出するはずの熱を活用し、除湿後に冷たくなった空気を暖めてから部屋に送るので、余計な電気も消費しません。おおむね、誰にでも有用な機能といえます。
加湿
冬場の暖房時、一般的な石油ファンヒーターやガスストーブを利用する場合、その燃料の中に含まれている水分によって湿度が補われます。これに比べると、エアコン暖房は乾燥が気になるかもしれません。一部のメーカーでは、外気の水分を取り込んで室内を加湿したり、室内の水分をイオン化して体に吸収しやすくしたりと、肌の乾燥を抑える機能を備えています。肌の乾燥が気になる女性に、人気の機能です。
気流制御
センサーで人の位置を把握し、運転開始時に、直接風を当てることで素早く冷感・温感を高めたり、平常運転時には、人体を避けて送風することで快適さを保つという機能が普及しています。エアコンの使用で体の不調を感じる方は、試してみる価値のある機能です。
「省エネ=電気代節約」で元は取れるのか?
カタログでは、「10年前の製品に比べて年間1万円節約!」などと大々的にうたわれていて、数年の使用で本体代金が回収できるかのような表記が目立ちます。このようなカタログを見ていると、省エネへの貢献は別として、本体価格が3万円の廉価タイプより、10万円の省エネタイプの方が、電気代を合算したトータル出費は安くあがり、お得な気がしてきます。しかし、ここで注意すべきは、カタログに記載されている電気代の算出基準です。社団法人日本冷凍空調工業会規格によるエアコンの電気代の算出基準は、以下の通り。
冷房期間:3.6カ月(6月2日~9月21日)
暖房期間:5.5カ月(10月28日~4月14日)
運転時間:6:00~24:00の18時間
(※平均的な南向きの木造住宅で、冷房時27℃/暖房時20℃に設定)
ご自身の使い方と比べてどうでしょうか? たいていの人は、1日に18時間も運転しないでしょう。冷房期間や暖房期間も、もっと短いのではないでしょうか。つまり、実際の運転時間が、この算出基準の半分だったら、節約できる電気代も半分にしかなりません。もし、徹底した省エネ派としてエアコンの使用を極力控えるつもりなら、実際に節約できる電気代は、実は極めて少ないことに注意しましょう。最新の省エネエアコンで電気代を節約し、エアコン本体代金を取り返すのは、あまり現実的ではないかもしれません。
暖房時の省エネと安全性を考えれば、エアコンでの暖房がおすすめです。よって、エアコンは夏だけでなく、一年を通じての活用を前提に選びたいものです。また、省エネ性能の高い高級機種は、外気温が低い時の暖房能力も高いので、ご注目を。
イオン(ion)
物質が電気的に中性ではなく、プラスないしはマイナスに偏っている状態。水蒸気のような状態になった水の粒子は、イオン化することで、より小さな粒子になる。