ハイブリッドはもっとも現実的なエコカー
一般ユーザーが入手できるエコカーとしては、国土交通省が認定する「低燃費かつ低排出ガス認定車」を除けば、ハイブリッドカー、ディーゼルカー、電気自動車(EV)の3つが挙げられる。このうち、もっとも人気なのがハイブリッドカーだ。一方、ディーゼルカーはヨーロッパで根強い人気があるものの、日本やアメリカでは排気ガスに対する印象が悪い。また、EVは電池の問題で長く一般販売はなかったが、日常使うには十分な容量が確保できたことで、三菱の「i-MiEV(アイ・ミーブ)」やスバルの「プラグインステラ」がすでに販売を開始し、日産も2010年にはEV専用車「リーフ」を販売する予定だ。ハイブリッドカーのハイブリッドとは、ここでは「二つ以上の動力源を持つ」という意味だが、その方式は以下の3つに大別できる。
シリーズ方式:エンジンを発電のみに使用してモーターを動力源とするもので、モーターを動かすために常にエンジンは動作する。モーターが動力源となるためトランスミッションが不要となる一方で、大型バッテリーの搭載やエンジンの動作による熱効率の低さが弱点となる。マツダが「水素ロータリーエンジン」でこの方式を生かした試作車を発表し、GMが10年に発売を予定する「シボレー ボルト」もこの形式だが、現在注目されているのは、次の2つだ。
パラレル方式:エンジンとモーターの二つの動力源が並行して駆動するもので、ホンダの「インサイト」が代表的。あくまで主役はエンジンであり、不足するパワーをモーターがアシストする。構造的にシンプルなため、機構が軽量であることを生かして、より小さな車両へ搭載可能。ただ、細かな制御は行わないため、燃費の面では今一歩の感がある。
シリーズ・パラレル方式:「プリウス」に代表されるトヨタのハイブリッドシステム(THS)。上記2方式の良いところを組み合わせたもので、エンジンをモーターの充電用に使ったり(シリーズ方式)、エンジンとモーターを併用したり(パラレル方式)、さらにギヤを複雑に組み合わせて両方式を作動させるなど、その制御はかなり精密。システムとしては重くなるが、燃費ではかなり優位だ。モーターだけで走行できる「EVモード」も選べる。
走行フィーリングは、両者ともエンジン排気量の割に力強い加速が得られる。これは低回転で最大トルクを発生するモーターが、回転が上がらないとトルクが出てこないエンジンを補佐するからだ。中でも一般道で発進・停車を繰り返す際には、通常のガソリン車よりも力強さを感じさせる。特に排気量が大きい「プリウス」はその力強さに驚く。
一方で、違和感を感じさせるのは回生ブレーキが動作したとき。回生ブレーキとは、運動エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリーに蓄えるもの。印象として、「インサイト」はこの時の違和感が極めて少なく、「プリウス」は強めに感じる傾向にある。とはいえ、ハイブリッドカーは現行のインフラを生かしながら熱効率の高い走行ができ、その意味ではもっとも現実的なエコカーとも言える。
インフラ整備が必要なEV
つぎに電気自動車(EV Electric Vehicle)はどうか。動力源に使うモーターは低速時から太いトルクが発生し、スタート当初から力強い加速を体感できる。三菱の「i-MiEV」の場合、最高出力は64ps(47kW)で、同じボディーを使う「iターボ」と同じだが、最大トルクは18.4kg-m(180Nm)と、「iターボ」の9.6kg-mをはるかにしのぐ。そのため、ガソリンエンジン車とは比較にならないほど静かで力強い加速が得られる。また、モーターだから変速機がなく、リバースギヤもないので構造的にシンプルにできるという特徴もある。ただ、高速域ではモーターの特性上、加速の伸びが衰えてくる。また、EV車の航続距離は、現段階では100~160km程度とガソリン車の半分以下。しかし、出先に追加充電できる設備があれば、航続距離はその分だけ増えていくので、普及には、ガソリンスタンドや駐車場での充電機能など、新たなインフラ整備が必須になる。
評価が高まるディーゼルカー
日本やアメリカでは不人気であるものの、ヨーロッパでは人気が高いのがディーゼルカーだ。人気の理由は、ガソリンエンジンより熱効率が良く、燃費もいい上、地球温暖化を招く二酸化炭素の排出量も少ないという点。一方で日本やアメリカでは「うるさい」「排ガスが汚い」などのマイナスイメージが強いが、その根拠となる「窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)、黒煙の排出量が多い」といった短所は、たとえば精密な電子制御で燃焼の最適化を図る高圧燃料噴射システムであるコモンレールシステム(common-rail system)などの新技術によって改善されつつある。近年では、ハイブリッドカーに匹敵するエコカーとして評価する声も高まっているほどだ。ただ、ディーゼル特有のフィーリングは残る。小さくなったとはいえ、騒音や振動はガソリンエンジン車よりは一般的に大きめ。ダイムラーが日本に投入しているディーゼルカー「メルセデス・ベンツE 320CDI」でも、今や国産車で唯一のディーゼル乗用車となっている日産の「X-TRAIL(エクストレイル)」でも、その傾向は強い。また、ターボを使っていることから初速のトルクが細めで、エンジン回転が高まらないと速度が乗ってこない。ただ、低燃費、低二酸化炭素というメリットは大きく、今後の改良で普及が進む可能性はある。