そもそも「おいしいご飯」とは?
おいしいご飯とは、どのような状態を指すのでしょうか? 一般的には甘み、粘り、弾力感が強いほど、おいしいと感じられるようです。炊飯のメカニズムは、水と熱を加え、米の主成分であるでんぷんをα化、すなわち糊化することで、おいしいご飯とは適度にα化した米といえるでしょう。α化が不十分だと、芯のあるご飯になり、逆にα化が進みすぎると、おかゆのようにドロドロになってしまいます。おいしく炊き上げる秘訣は、沸騰状態を長く保ち、米をほどよく対流させて、一粒一粒に適度な水と十分な熱をムラ無く行き渡らせるのがポイントです。しかし、旧来、電気炊飯器は火力の面で、かまどやガス釜に劣る時期があり、α化が充分にできず、さらに余った水がご飯をべっとりとさせてしまっていました。電気炊飯器がかまどやガス炊飯器に比べてまずいという印象をもっている人が多いのもうなずけます。
炊飯器によって味が変わる?
今日では、電気炊飯器の加熱メカニズムは、ヒーターで内釜を加熱するヒーター方式(ヒーター式)から、加熱コイルに高周波電流を流して発生させた磁力線を内釜に伝え、そこに生じる渦電流と内釜の電気抵抗によって内釜自体を発熱させる誘導加熱、すなわちIH方式(IH式 induction heating)が主流となっています。IH方式はヒーター方式に比べて効率よく高い火力を得られる点で優れており、かつてのような火力不足は解決したといえます。現在では、同じIH方式でも、メーカーはさらなるおいしいご飯を求めて、高温をより持続させる方法や、火加減、加熱時間の調整の研究を行っている段階です。これらのノウハウがメーカー各社で独自に蓄積されているためか、面白いことに、メーカーごとに炊き上がるご飯の味に傾向が見られます。メーカーの熟練開発担当者は、炊き上がったご飯を食べただけで、どのメーカーの炊飯器で炊いたかが分かるそうですから驚きです。
良しあしは別の話として、メーカーや炊飯器によって炊き上げまでの過程で行う工夫が異なり、また内釜に対する工夫も異なるため、味に違いが出るのは事実です。
高温の確保には工夫がいっぱい
ご飯の味を左右する要素の一つ、高火力の点では、IHコイルを側面やふたの面にまで配置し、内釜全体を素早く高温にするタイプが有利です。また、メーカーの考え方により、内釜の素材に熱伝導のよい高純度の銅を使い、熱しやすく冷めやすい性質を利用して、きめ細かな温度調整を行うもの、あるいは保温性を重視して土鍋風の素材を使うもの、内釜自体の厚みや構造に工夫をもたせたものなど、「内釜の勝負」も注目に値します。最近では、「圧力IH」などとうたい、内釜内部を圧力鍋のように加圧して、沸点を100℃以上に引き上げることで、より高温にする製品も増えています。一部の製品では、加圧と減圧を繰り返すことで、急激な沸騰状態を作り出し、より大きな対流を発生させるという凝ったモノまで登場しています。このようなさまざまなアイデアが盛りだくさんになって、最近では、10万円を超える高級炊飯器も増える傾向にあるのです。
選び方の入り口は?
まずは容量を決める!家族構成、ライフスタイルや食の好みにもよるので、一概に炊飯容量は人数をもとに決定できませんが、余裕をもとうとして大きすぎる炊飯器を買うのは考え物です。一般的には、最大容量の80%ほどで炊いたときが、最高の炊き上がりになるといわれます。炊飯器に適した容量で炊飯すれば、電気の消費効率がよいので、省エネにもつながります。また、炊きたてにこだわらなければ、朝に一日分をまとめて炊いて、昼食や夕食は電子レンジでチンするのも、省力化、省エネの観点からは賢い使い方です。
ヒーター方式かIH方式か?
ヒーター方式に比べて、IH方式は高価です。一人暮らしなど、あまり炊飯をしないなら、ヒーター方式でもよいでしょう。ご飯好きで味にこだわるならIH方式がオススメで、3万~5万円程度が売れ筋となります。
洗いやすさも使いやすさ!
使用頻度の高い炊飯器は、お手入れのしやすさも大切なポイントです。一般的に、パーツがすべて取り外せ、丸洗いができるものが好評です。高機能タイプでは構造が複雑になるため、洗うべき部品が多いものもありますので、購入前にチェックが必要でしょう。
押さえておきたい注目機能は?
パンが焼けて、煮込み料理もできる!今や、いろいろな調理ができる炊飯器が増えてきました。炊飯器でパンやケーキを焼くウラ技は、テレビやネットなどを通じて広がり、メーカー各社がそれならばと機能に織り込んで以来、今や珍しくない機能となりました。また、肉じゃがやカレー、シチューなど、煮込み料理のコントロールができる炊飯器が登場しています。炊飯器で1台2役を効率よくこなせ、台所のスペースの節約にもなりそうです。ただし、内釜に料理のにおいが残り、調理中にご飯が炊けないなどの問題もあります。
蒸気が出ない!
従来、外部へ排出していた蒸気を冷やして水に戻し、内部に蓄える製品が登場しています。閉め切った部屋での炊飯であってもにおいが気になりにくく、外出時にタイマー炊飯する家庭で人気です。また、蒸気によるやけどの心配がないので、小さなお子さんのいる家庭でも重宝するでしょう。
毎日食べるご飯にこだわりを
お気に入りの銘柄米を炊くなら、やはりIHタイプで、しかもこだわりの機能を満載した高級炊飯器を選べば、さらに味わいを楽しめるはずです。また、一般的なお米でも、炊飯器を選ぶことによって、より好みにあった炊き上がりで、おいしく食べられることになるでしょう。ご飯は毎日食べるもの。炊飯器を買い替えの際は「どれも同じ」と思わないで、こだわりをもって選んでみてください。