なでしこ、初戦は7月25日!
ロンドン・オリンピックの女子サッカーは、30を超える全競技に先駆け、12年7月25日(水)に初戦6試合が行われる。総合開会式の2日前、04年のアテネ大会、08年の北京大会に続き、なでしこジャパンは日本選手団の先陣を切ることになる。出場は12チーム。4チームずつ3組に分かれて1次リーグを戦い、各組上位2チームと3位の3チームのなかで成績の良い2チーム、計8チームが準々決勝以降に進出する。準々決勝は8月3日(金)、準決勝は6日(月)、そしてメダル獲得がかかる3位決定戦と決勝戦は9日(木)に行われる。
「ロンドン大会」と言っても、サッカーの会場はロンドン以外が多く、コベントリー、マンチェスター、ニューカッスルというイングランドの各都市とともに、スコットランドのグラスゴー、ウェールズのカーディフも舞台となる。しかし決勝戦は「サッカーの聖地」と言われるロンドンのウェンブリー・スタジアムだ。
すでに世界の大会の地域では予選がほぼ終了し、12のうち11の座が決まっている。4月4日(水)にオセアニア地域の代表(1チーム)が決まると、4月24日(火)にウェンブリー・スタジアムで組分け抽選会が開催され、開幕を待つばかりとなる。
出場国は実力伯仲
女子ワールドカップ(出場16チーム)より4チーム少ない12チームで行われるオリンピックの女子サッカー。当然、強豪が並んでおり、1次リーグから予断を許さない。優勝候補筆頭はFIFAランキング1位のアメリカ。それに対抗するのが3位の日本(なでしこジャパン)、4位のブラジルと見られている。ヨーロッパはオリンピック予選を行わず、11年の女子ワールドカップの上位2チーム、フランスとスウェーデンに出場権を与えたため、ワールドカップの準々決勝で日本に敗れたドイツ(ランキング2位)が出場できないのは少し寂しい。
急速に世界のレベル差が詰まっている女子サッカー。ベスト10に入っているヨーロッパの両国や北朝鮮だけでなく、出場チームのなかではランキングが低いコロンビアも侮ることはできない。ランキング60位代のアフリカ勢(カメルーンと南アフリカ)も、高い個人技と強いフィジカルをもち、警戒を要する。
注目は開催国「イギリス」だ。政治のうえではひとつの「国家」をかたちづくるイギリスだが、サッカーの世界ではイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4協会が独立してFIFAに加盟している。しかし今回のオリンピックに限って連合チームを結成する。11年の女子ワールドカップでなでしこジャパンに唯一の黒星(0-2)をつけたイングランド(ランキング8位)を中心に、スピードとテクニックのあるスコットランド(22位)の選手が入れば、金メダルもけっして夢ではない。
オセアニアからはニュージーランド(24位)が出てくる可能性が大きい。11年のワールドカップ初戦でなでしこジャパンがかろうじて2-1で下した相手だ。
コンビネーション磨く時間は十分
メダル獲得を目指すなでしこジャパンは、2月中旬に国内にいる選手だけで強化合宿を組み、2月末からのアルガルベカップ(ポルトガル)で戦力充実をはかった。4月にはアメリカとブラジルを招いての強化試合を行い、6月にはヨーロッパ遠征(スウェーデンなど強豪国と2試合を予定)、そして7月11日(水)に東京で最後の強化試合を行い、ロンドンに向かう。なでしこリーグは4月14日に開幕、6月10日までに前期を終了し、後期の開幕は9月15日。ヨーロッパ遠征からオリンピックにかけ、40日間にわたってじっくりと調整できるのは大きな強みだ。
佐々木則夫監督は、11年の女子ワールドカップを戦ったメンバーに大きな信頼を置いている。コンビネーションとチームワークが最大の武器と言っていいなでしこジャパンだから、当然のことだ。しかし次世代からの突き上げや競争がなければ、チームは停滞する。ライバルたちがチーム力を伸ばしているなかで、「停滞」は「後退」と同義語だ。
なでしこ快進撃のカギは新戦力に
オリンピックの選手登録は、女子ワールドカップ(21人)より3人少ない18人。そのなかに、昨年のメンバーを押しのけ、何人が割り込んでくるか--。期待は、女子U-20日本代表メンバーでもあるFW(フォワード)京川舞(宮城・常磐木学園高校→INAC神戸)だ。突破力と決定力をもった選手で、安藤梢(デュイスブルク)、永里優季(ポツダム)、大野忍、川澄奈穂美(ともにINAC神戸)といった実力派ぞろいの攻撃陣の一角に食い込む可能性は十分ある。
11年の女子ワールドカップ後、レギュラーでいちばんの若手だったセンターバックの熊谷紗希がドイツのフランクフルトへ、そして左サイドバックの鮫島彩がフランスのモンペリエに移籍した。現在ヨーロッパにいるなでしこは、安藤、永里、そして鮫島と同じモンペリエでプレーするMF宇津木瑠美を含め5人となった。大柄な選手たちと日々戦って、フィジカル面で劣等感をぬぐい去った「ヨーロッパ組」の存在が、なでしこジャパンが世界の強豪と対等な試合ができるようになった大きな要因だった。
強化試合と6月からの最終準備でパスワークに磨きをかけ、11年の女子ワールドカップと同レベルのコンディションでロンドンに向かうことができれば、そしてそこに1人でも2人でも新しい力を加えることができたら、「メダル」は夢ではない。
女子サッカーでは、オリンピックはワールドカップより厳しい。しかしそのなかで、なでしこジャパンが再び大きく輝く可能性は十分ある。
アルガルベカップ
ファロを中心としたポルトガル最南部のアルガルベ地方を舞台に、世界の強豪女子代表チームが集まる重要な大会。2012年は2月29日から3月7日の8日間の日程で開催される。A組中国、ドイツ、アイスランド、スウェーデン、B組デンマーク、日本、ノルウェー、アメリカ、C組ハンガリー、アイルランド、ポルトガル、ウェールズに分かれ、AB両組は「チャンピオンシップ」と名付けられ、1位同士で決勝戦を争う。さらに両組2位同士の3位決定戦、3位同士の5位決定戦が行われ、両組の4位チームは、C組の4チームとともに7位から12位を決める。