ワンセグは日本独自の規格
注目を集めるのが、2006年4月にサービスが始まった「ワンセグ」である。地上デジタル放送は、6MHz(メガヘルツ)の電波帯域を13セグメントに分け、このうち12セグメントを使用、残された1セグメントを活用し、日本独自の移動体向けテレビ放送サービスを行う。名称は、この「ワンセグメント」に由来する。
ワンセグの規格は、画面サイズが横320ドット×縦180ドット、毎秒15枚のコマ数で放送されている。画面の縦横比は16対9でハイビジョンと同じだが、画質はハイビジョンではない。地上デジタル放送やBSデジタル放送と同様に「コピーワンス」制御信号とともに放送されていることから、1回限りの録画は可能だ。ただし、ダビングやブロードバンドへの再送信はできない。
08年からは独自放送がスタート
ワンセグは低消費電力で受信できる。そのため、バッテリー駆動の携帯電話を始め、携帯情報端末の特徴が生かせるので、受信端末として、携帯電話やノートパソコン、カーナビ、専用ポータブルテレビなどを利用できる。なかでも、バッテリーが長持ちするようになったことや、液晶画面が大型化・高精細化したことで、携帯電話が受信端末としての期待を集めている。07年7月現在で20種類ほどの端末が販売されており、液晶画面が横方向に回転するなど、視聴のしやすい設計の製品も増えている()。
視聴は基本的に無料だが、NHKでは従来のテレビ放送と同じく、世帯単位での受信料の契約を求めている。
番組内容は、地上デジタル放送が都道府県単位での放送であることから、ワンセグも都道府県ごとに異なる。現在は、放送法によって、地上デジタル放送と同じ内容の番組(サイマル放送)が提供されているが、08年からはワンセグのみの独自番組が予定されている。なお、災害時には、従来のテレビ放送と同様に緊急放送信号が発信されるため、携帯電話の通信が困難な場合でも、情報を入手できるようになる。
独自放送をめぐる動きは、携帯電話事業者や放送局、広告会社を中心に盛んになっている。06年4月にはNTTドコモと日本テレビが、ワンセグとiモードを連動させてテレビ番組や映画を配信するために、「D.N.ドリームパートナーズ」を共同で設立している。また、同年6月には民放5社と大手広告代理店4社が、番組ガイド的な動画配信ポータルサイト「ドガッチ」を開始しており、今後、ワンセグ向けにもサービスを充実していくことを予定している。
双方向性生かす番組が登場
ワンセグの特徴としては、携帯電話の通信機能を生かし、視聴者が積極的にテレビ番組に参加できる双方向性や、放送番組とともに提供されるデータ放送が挙げられる。データ放送で番組の詳細情報が入手できるだけでなく、通信機能を利用して、紹介された商品をショッピングサイトで購入したり、番組中のクイズやアンケートへ参加したり、ポイントをためてプレゼントに応募したり、といったように、インターネットの利用と番組の視聴を組み合わせて楽しむことができる。また、ホームページやメールマガジンで紹介された番組のリンクをクリックして、視聴や録画の予約をすることも可能である。
放送内容に連動したデータ放送サービスでは、たとえば、NHKの連続テレビ小説「どんど晴れ」では、番組のあらすじ情報や舞台となっている岩手の観光ガイドを提供、さらに、正解するとオリジナル待ち受け画面が当たるクイズも出題されている。大河ドラマ「風林火山」でも、あらすじや登場人物、歴史、舞台となっている地域、製作秘話などの情報が提供されている。TBSの「花より男子2」ではスタンプラリーを実施し、最終回にスタンプ数によってプレゼントが当たるサービスが行われた。
また、プロ野球やサッカー、バレーボール、フィギュアスケート、卓球、ゴルフ、F1、駅伝などのスポーツ番組では、選手のプロフィールや結果予想クイズなどが提供されている。このほかのジャンルでも、TBSの「CDTV」では年代別の音楽ランキング情報、テレビ東京では、東証1部・2部の株価情報サービスなど、さまざまな情報が提供されている。
番組内容に連動していない独自データ放送もあり、こちらはニュースや天気予報のほか、交通情報や災害情報といった生活情報が中心である。占いやグルメ情報なども提供されており、外出時に役立つ情報が多い。
独自コンテンツが発展のカギに
携帯電話のほか、電子辞書、携帯型ゲーム機などにもワンセグ機能が搭載され、パソコン向けのUSBチューナーも低価格化していることから、今後、ワンセグが身近な存在になることは間違いない。生活情報をはじめ、既にインターネット上には「ワンセグ」のデータ放送に類似したコンテンツが多く存在しているため、ワンセグの独自コンテンツで差別化を図ることが、今後の利用者増のカギとなるだろう。