自動化が進む運転操作
ITやネットワークも含めたコンピューター技術の進歩は、いまや自動車の運転を、半自動化させるレベルにまで推し進めている。本来、人間が行うべき運転操作のいくつかを、コンピューターとそれに制御された機械系に肩代わりさせ、必要な仕事量を自動的に処理させるというシステムだ。運転支援機能、あるいは運転支援装備などと呼ばれ、最近2~3年の間に急速な進歩を見せる新たな領域のメカニズムだ。煩雑であったり習熟度が要求されたりする運転操作を機械が代わって行うため、人気を集めるシステムとなっている。難しい縦列駐車も簡単に
こうした運転支援装備のなかでも、いま最も注目されるシステムが“駐車支援”機能である。90度向きを変えながら後進する“車庫入れ”や、路肩に沿って縦一列に止める“縦列駐車”を苦手とするドライバーが多いことから考え出された機能で、車両の前後左右に設けた小型カメラやセンサーで車両周囲の情報を集め、その情報を基にコンピューターが進路を計算し、ドライバーの指定する駐車スペースまで自動的に車両を導くシステムである。ただ、ハンドル操作などを音声で指示するシンプルなものから、アクセルやハンドル操作までを自動化し、ブレーキ操作のみドライバーが受け持つ準全自動システムのものまで、メーカーや車種によって支援の程度はさまざまである。これは装備品としての価格を考慮したためで、高額なものほど自動化のレベルは上がる傾向にある。高速走行もより安全、安心に
高速道路を走る自車の前後状況を検知しながら、車速と車間の維持管理を行う半自動システムが、車間維持装置を組み合わせたクルーズコントロール機能である。ハンドル操作はドライバーが行うため半自動の働きとなるが、設定速度で走行中に前車との距離が詰まると車間維持のため自動的にブレーキがかかり、安全車間が保たれると再び加速をして元の設定速度に復帰するシステムである。前後車間距離の検知には、天候の影響を受けにくいレーダーを用いている。また、このシステムを補助する機能として、自車レーン保持機能がある。センターラインや路側線をカメラで捉え、走行レーンから外れないよう、ハンドル操作を自動補正する機能である。安全性を高める制御機能
このシステムを発展させると、積極的には喜べない機能だが、不可避の衝突に備えたプリクラッシュシステムとなる。車両進行方向に障害物がある場合、障害物との距離を自動的に検知。回避のための警告モード、緊急制動に備えたブレーキ系の与圧モードを経て、最終的に衝突が避けられないと判断された場合の自動制動を行う機能である。逆に、自動ではなく判断はすべてドライバーに任せる機能だが、ドライバーの夜間視認能力を大きく引き上げる“ナイトビジョン”のシステムがある。赤外線によって前方にある熱源、すなわち生命体を検知するシステムで、道路照明のない雨天の夜間走行時といった悪環境下でも、即座に歩行者の存在を捉える手助けをする。
ナビとリンクし、ギアシフトを制御
一方、いまやかなりの普及率となったナビゲーションシステムのGPS機能とマップデータを利用する、AT(オートマチック・トランスミッション)の制御システムも実用化されている。システム名は“ナビリンク機能付きAT”といった表現になるが、D(ドライブ)レンジ固定による走行で、道路形状(平坦路/登坂/降坂、直進路/カーブ路)に応じた走行ギアの選択を、自動的に行えるようにしたシステムだ。たとえば、降坂路でアクセルを戻したとたんにシフトアップすることを防いだりする。AT車でアクセルを戻した際にシフトアップするのは正しい動作だが、エンジンブレーキ効果を利用したい降坂路では都合が悪く、下り坂であることを車両に認識させるため、ナビシステムのGPS機能とマップデータを使うのである。同じことはカーブ路の走行についてもいえ、回り終えてからの素早い加速に備え、低速ギアに保つ制御が行われる。
高度化する挙動制御技術
コンピューター制御による最先端機能ともいえるものが、車両挙動の安定化システムだろう。車両がカーブ路を走る際に発生する旋回力(ヨーモーメント)を制御することで、カーブを曲がりきれなかったり、スピンしたりすることを防ぐ機能である。制御の基本は4輪独立のブレーキコントロールで行うが、ABS(アンチロック・ブレーキ)やTCS(トラクション・コントロール)、エンジントルクの発生とATの協調制御など、自動車の制御にかかわるあらゆるシステムを総動員させることで初めて成り立つシステムで、最新のものではハンドル操作による旋回力の発生も制御項目に加えている。まだほかにも細かなシステムはいくつかあるが、これら主立った機能の延長線上には、将来に向けた全自動運転システムの一端が見え隠れしているのである。
TCS(トラクション・コントロール)
タイヤの空転(ホイールスピン)を制御して駆動力を無駄なく路面に伝え、車両を安定させる機能。