日本国内でも、電気自動車をいちはやく販売した三菱自動車工業や日産自動車は、電気自動車で通勤する社員向けに大規模な充電コンセントを設置し、職場で仕事をしている間に帰宅するための充電が済んでしまうようにしている。
こうした電気自動車ならではの使い方や、それに合った社会基盤整備が進めば、電気自動車はいかに面倒がなく便利な乗り物であるかに気付くことができる。急速充電設備は、ガソリンスタンドの発想であり、その使い方の違いが理解できないまま消費者に不安が募っているのが実情だ。
消費者に「変化」を意識付ける
根本的な生活実感の違いは、体験するのが手っ取り早い。だが、一朝一夕に国民全てが実体験できるわけではない。そうした新しい生活様式を見据えるために、未来が変わるという宣言を誰かが行わなければ、消費者も企業も変わっていくことができない。そこに、国が、10年後や20年後には生活が変わり、それは国民にとって明るい未来につながるのだと宣言すれば、何かが変わっていくのだろうという漠然とした印象を多くの人々が持つことができる。
今回のヨーロッパ各国における2030~40年の未来へ向けた決意や宣言は、そうした意味を持っている、そう考えれば、分かりやすい。
自動車も変わるが、社会が、生活が変わる。それが、本当の21世紀の世界なのであろう。
20世紀も、1920年前後までは19世紀を引き摺(ず)り、混沌とした時代だったはずだ。ガソリンエンジン自動車を1886年に発明したのは、ドイツのカール・ベンツだが、世界へ普及させたのはアメリカのヘンリー・フォードであり、有名なフォードT型が1908年に発売され、爆発的売上台数を記録するのは1920年を過ぎてからのことであった。そして、石油の世紀として大きく発展し、自動車もまた高性能になっていった。
環境の世紀と言われる21世紀も、これからその基盤がいよいよ整い、発展していくことになるのだろう。その準備をせよというのが、英仏や、ドイツ、インド政府や議会の宣言となって表れていると見る。
ZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)法
アメリカ・カリフォルニア州内で一定台数以上の自動車を販売するメーカーは、排気ガスを出さない車両(ZEV)を一定比率以上販売しなければならないとする規制。