また、実際には事故やトラブル続きの核燃料サイクルを引き続き着実に推進するとし、「エネルギー産業の国際展開の強化」「技術やノウハウの共有」「世界のエネルギー供給事業への積極的参画」などをあげ、原発輸出の推進も盛り込まれた(エネルギー基本計画2014)。1万7665件よせられたパブリック・コメントの9割以上は脱原発を望むものであったが、これらは無視されてしまった(朝日新聞2014年5月25日)。
その後2015年7月に策定された「長期エネルギー需給見通し」においては、2030年の電源構成として、原子力20~22%を掲げた。これは廃炉が決まっているものをのぞくすべての原発(43基)を動かし、40年の運転期限を超えた老朽原発をも動かして、かろうじて達成できるという数字であり、脱原発の民意(日経新聞世論調査「再稼働を進めるべきではない」60%、「進めるべきだ」26%、日経新聞2016年2月29日)から乖離しているだけではなく、現実的でもない。
原発輸出にシフトする日本だが?
原発輸出については、2012年12月の安倍政権発足後も、首相自らによるトップセールスが繰り返されている。不透明なプロセスで税金を日本原子力発電株式会社(日本原電)につぎ込み、ベトナムやトルコで、原発建設のための事前調査に協力してきた。
2016年には日印原子力協定が締結されたが、核不拡散条約にも包括的核実験禁止条約にも加盟していないインドとの協定締結は、核不拡散という点からいっても大きな懸念が残るものとなった。
さらに2016年12月には、日英両政府で、原発建設における包括的な協力について覚書を締結した。覚書では、日立製作所および東芝がイギリスで行う原発建設について言及している。日本政府は、これらの事業について国際協力銀行(JBIC)や日本政策投資銀行を通じて、総額1兆円もの投融資を行う方針を示した。
国内における原発の再稼働についても、海外への原発輸出についても、政府は強引に進めようとしているが、実は、思うようにいっていないという現実がある。
2017年11月現在、実際に動いている原発は九州電力川内原発1、2号機、関西電力高浜原発3、4号機にとどまる。四国電力伊方原発3号機については再稼働したが、2017年12月13日に広島高裁が運転差し止めを認める決定を行った。
原発輸出に関しては、有望であったリトアニアは日立が原発1基を受注したが、2012年に住民投票で原発建設が否決されたのち、2016年の選挙で、反原子力政策の「農民・グリーン同盟」が第1党となり、原発計画は凍結された。前述のとおり、ベトナムは原発導入を撤回した。トルコは三菱重工業などの企業連合が原発4基を受注したが、反対運動に加え、政情不安、テロや地震リスクなどが指摘される。現在、有望視されているのは前述したイギリスだ。しかし、何よりも東芝のアメリカ子会社のウェスチングハウス・エレクトリック(WH)の経営破綻に伴い、東芝が原発事業から撤退したことが如実に示すように、原発は経済的にもきわめてリスクの高い事業になってきている。
事故の危険性、何世代にもわたり管理が必要な核廃棄物の問題、核兵器への転用問題、被ばく労働に見られるような非倫理性など、原発のもつ問題点は、解決不可能なものが多い。現在、政府や既存の電力会社は原発の生き残りのために多くの政策コストを費やしているが、それは未来に向けた投資とはならない。まずは、福島第一原発事故の収束と被害者の救済を着実に行い、さらに、次世代を見据え、小規模分散型で市民参加型の再生可能エネルギーや省エネ技術など持続可能なエネルギー社会構築のために、限りある公的資源を集中させるべきである。
日本も「勇気ある決断」を行う時期にきている。