しかし、著作権法は、著作者の権利を守るとともに、著作物の利用を促進させる目的を持った、バランスのとれた法律といえます。第1条には、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする」と記されています。著作権法上の引用は、著作者等の権利の保護を図りつつも、著作物を公正に利用して新たな文化を形成していくことをめざすものだとも考えられます。
かつては一般の人々が、著作物を公表する場はそれほどありませんでした。SNSの普及等により、情報発信の手段が格段に増え、多くの人が著作物を公表するようになった今日、著作権侵害とならないよう適正な引用を心がけていただければと思います。
【おまけ】ここも知りたい! ネット上の著作権
2017年の日本のインターネット利用率は80.9%(「平成30年版 情報通信白書」、総務省)。これほど多くの人が使っているネットには、無料で見られる情報や画像があふれていますが、これらを無頓着に利用するのは危険です。どんな点に気をつけるべきでしょうか(イミダス編集部)。
1)「パクツイ」はリスキー!
ネットでさまざまなSNSを閲覧すると、適法とはいえない著作物の利用例がたくさんあります。画像の無断利用や、他人のツイートを自分のツイートとして丸写しする「パクリツイート」(パクツイ)などはその典型です。それらの99%は、著作権者に知られていないか、知られているけれども、あえて見過ごされている状態だといえるでしょう。しかし、それはたまたま告発されていないだけ、ともいえます。もし著作権者が侵害行為を見つけ、それを不快に思って訴えたとしたら、大きな問題となるのだと意識しておくことは必要です。
2)「フリー」に思えるコンテンツも、利用規約に要注意!
ネット上に膨大な項目が掲載されており、調べものにとても便利なウィキペディア。そのメインページには、「誰でも編集できるフリー百科事典です」という記述があり、ともすれば、著作権に制限されない「著作権フリー」のコンテンツのように思えるかもしれません。しかし、実はその利用にはルールが存在します。
「ウィキペディアを二次利用する」というページには、ウィキペディア上の文章や画像ファイルは「原則として著作物」であること、「各国の著作権法の下で保護を受けてい」ることが明記されています。そして利用方法としては、ウィキペディアが採用するライセンスの利用許諾条項に従うか、「著作権の制限規定」に従うか、「権利者の許諾」を受けること、とも書かれています。
これらのルールを無視してコピペをすれば、トラブルが生じることもあり得るのです。
同様に、インターネットで「無料」や「著作権フリー」といった素材を見つけ、使ってみようと思ったときには、利用規約をよく読んで、自分の利用方法が規約に違反していないか確かめましょう。
(注1)
翻案権……著作者の権利の一つで、著作物を編曲、変形、脚色、映画化、その他翻案などする権利のこと。著作権法第27条に定められている。
(注2)
同一性保持権……著作者の権利の一つで、著作物とその題号(タイトル)の同一性を保持する権利のこと。著作者の意に反してこれらを変更、切除、その他改変することはできない。著作権法第20条に定められている。