【前編「制度に振り回される新規参入組、『新電力』の受難」はこちら!】
高騰の原因①旧一電による「売り惜しみ」
電力価格高騰の一番の原因は、旧一般電気事業者(旧一電)が日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場に売る電力量を減らしたこと。「売り惜しみ」である。ただし旧一電側にしてみれば、決められたルールに則って「売り入札量」を決めただけであって、売り惜しみをしたのではないという言い分がある。まさに「ルールに則ると」JEPX市場の商品がなくなるというルールになっていたということだ。
どのようにJEPX市場から電力が消えたか。それを図4にもどり細かく見てみよう。
図4 1カ月間の売り入札削減
12月1日から1月25日までのJEPX市場の取り引き量のグラフである。12月26日に「売り入札」の量が大きく減っている。その前の12月24日にもかなり減っていて、25日には持ち直したが、26日にはドーンと落ちる。そのまま1月25日まで回復しない。ほぼ1カ月間、JEPX市場は電力が不足したまま放置されていた。
図5に旧一電における売り入札量の決定ルールを示す。まず①自社で小売りする分、②他社に卸す分、③予備力の確保、④燃料不足への備え、⑤市場への出荷(売り入札可能量)という順番だ。保有する供給力から、①から④を引いた残りを市場に供給する。このとき、寒波が襲来し天然ガス在庫が少なくなっていたので③と④を多めにとると⑤はゼロになったと言うことだろう。
図5 旧一電における売り入札量の決定ルール
その運用に間違いがないか検証するために重要なのが、図5・右側の「需要 見積もりと実績の比較」における「乖離率」だ。乖離率は大きくないので、旧一電としては需要の見積もりに間違いはなかったと言いたいのだろう。しかしそこにはトリックがある。この1月上旬において大きく不足する期間もあれば、大幅に余っていた期間もある。どちらかと言うと、需要を読みきれず迷走状態になっていたようにも見える。しかし過不足を平均すると、この1%程度の数字におさまるということだ。毎日の乖離率を検証し、本当に問題がなかったのか、厳正な判断が求められる。