そしてどの事業者も、取引先を選定する際に、これまでは相手の提供する製品やサービスの内容で選んでいたのを、「インボイスを発行できる適格請求書発行事業者かどうか」で選ばざるを得なくなる。税制の介入によって商取引が歪められ、免税事業者が排除されてしまうわけで、許されることではないと考えます。
ただでさえコロナ禍で経済が疲弊している中、こうした制度を導入することは、日本経済を大混乱に陥れることになります。私が所属する東京税理士会はインボイス制度導入に反対の立場ですが、全国組織の日本税理士会連合会が条件付きながら「円滑な導入・実施について」という提案を取りまとめたことは残念でなりません。税理士の使命は「納税者の権利を護る」ことであり、その使命の遂行のためには、ときに行政に対してももの申さなくてはならないと思うのです。
先の通常国会では、立憲民主、共産、社民、れいわの野党4党が消費税減税とインボイス廃止を求める法案を共同で提出し、継続審議になりました。どれだけ問題の多い制度かということを知らしめ、反対の世論を広げていくことで、まだまだ導入の中止に追い込むことは可能だと思っています。「インボイス制度の中止を求める税理士の会」にも、これまで全国で351人の税理士が賛同を寄せてくれました。今後も税理士の仲間を増やし、根強く反対の声を上げ続けていきます。
一人親方
建設業などで被雇用者を使わず、自分と家族だけで事業を行っている事業主のこと。