男性の育休取得率が7~8割に及ぶ北欧などでも、以前はキャリアへの悪影響を気にして育休を取得しにくい環境だったのですが、勇気のある一部の人が育休を取得したことで、それが周囲にも伝播し、どんどん増えていきました。近年日本でも、「産後パパ育休」の認知が広がったことなどで、急速に育休を取得する男性が増えつつありますが、まだまだ少ないと思います。
――国の政策で出生率を上げることはできるのでしょうか?
政策で上がる出生率というのは、0.1~0.3程度だと考えられています。国の少子化対策はもちろん重要ですが、それだけではどうしても限界があるというのも実情です。
これは研究上の根拠があるわけではありませんが、日本では、社会の中で子どもの存在が歓迎されていないような空気が見受けられます。ベビーカーで公共交通機関を利用するのは迷惑だと言う人も一部にはいる。国が少子化対策で手厚く子育て支援をしたとしても、そうした空気の中では、子どもを持ちたいとは思えないだろうな、と強く感じます。
例えば、出生率が非常に高い(2019年の合計特殊出生率が全国平均の1.36を大きく上回る2.95)ことで注目されている岡山県・奈義町という町があります。同町では、子育て支援のために、給付金制度が整っていたり、住宅が提供されたり、子育て支援サービスが充実しています。もちろん、そうした政策も重要なのだと思いますが、奈義町のケースを見ると、町全体が「子どもは宝」という空気に満たされています。そうした空気の中だったら、より子どもを育てようと思うようになるのかもしれません。
子どもは、将来の自分たちや社会を支えてくれる存在であり、子育て政策は次世代への投資です。日本の社会全体で子育てしやすい環境をつくっていくためにも、男女平等や働き方改革を推し進めて、子どもに対する社会の意識を変えていくことが、大事なのだと思います。