また私は、この与党の思惑にも対策を考えています。
安保関連法が施行された瞬間、基本的人権の一つである平和的生存権が害されることになります。そこで、各界のトップクラスの方々100人に原告になっていただいて訴訟を起こすのです。弁護団もメジャーな弁護士を1000人揃える。そうすれば裁判所も真剣に受け止めざるをえなくなります。私も学者生命をかけて、訴状を書きます。
きっと最高裁判所は、統治行為論(極めて高度な政治性を有する問題は、司法審査の対象にならないとする理論)で逃げるでしょうし、判決が出るまでには4年はかかります。「小林、なに呑気なことを言っているんだ」と思うかもしれませんが、訴訟はあくまでキャンペーンの手段の一つです。裁判が話題にのぼるたびに、原告の一人ひとりがツイッターでつぶやくたびに、安保関連法について考える人が増えていく、それが目的です。
ですから、もし参議院選で野党が過半数を上回り、さらに次の衆議院選でも野党が勝てば、その時点で訴訟は取り下げます。なぜなら、国会で廃止法案を可決できれば済むことですから。
党派ではなく個人で闘う
私は1979年から2013年まで大学で法学部の教壇に立っていました。その間、政治に無関心の学生が多いことを嘆き、定年退職した際には、これが潮時と思いました。しかし、今回、学生グループ「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)」の諸君をはじめ、自然発生的に若者たちが立ち上がり、政治に関心を持つのを見て、自分ができることをしなければと考えるようになりました。その一つは野党共闘を実現することです。自民党の憲法研究会に30年間付き合うなかで、私はいつも良心に従って意見を述べてきました。共産党の機関紙「しんぶん赤旗」であっても、自分が納得すれば登場しました。そうしたことが功を奏し、野党の皆さんとも自由に話ができるポジションにいます。民主党の岡田克也代表、大学の教え子で党代表代行の長妻昭くん、維新の党の松野頼久代表や柿沢未途くん、社民党の福島瑞穂さん、共産党の志位委員長、生活の党の小沢一郎さんとも会って話をしました。自分が役に立てるのなら、どなたにでも会う用意はできています。
また、次の参議院選からは選挙年齢が18歳以上に引き下げられます。この公職選挙法改正案がすんなり通ったのは、自民党が自分たちに有利と踏んだからです。ですから、これだけ政治に関心を持ち、立憲主義や民主主義、憲法について考える若者が増えたことは大きな誤算に違いありません。
だからといって、野党が有利ということでもありません。彼ら若者たちは、党派ではなく、まともな政治をする人、つまり個人で選ぶと思います。若者に限らず、政治の不条理や政治家の不祥事が続き、政治不信に陥った選挙民の多くがそう考えていると思います。
そうした思いを真摯に受け止めて、野党は、選挙戦、そして安保関連法廃止への闘いを進めていかねばなりません。