それこそ、日中関係改善の最大の意義のはずだ。
しかし安倍外交は、攻撃兵器に成り得る護衛艦の空母化をはじめ、2基6000億円と高いだけで役立たずと評判の地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージスアショア」や、1機100億円超のステルス戦闘機F35の147機を購入し、「バイ・アメリカ」(米製品を買え)を叫ぶトランプの顔色をうかがう。これらの軍備はいずれも、中国と北朝鮮に向けられている。
その一方で安倍は、18年10月の訪中時に、「新時代の日中関係」に向けて「競争から協調へ」「互いに脅威とならない」と習に約束している。米国際政治学者のイアン・ブレマーが言うように、中国に対して「軍事力で対抗するのは愚策」なのだ。外交力で脅威を減らす努力こそ関係改善の優先課題のはずである。
日米安保と自主防衛の両輪
安倍の安保政策の軸は「日米安保」強化と「自主防衛」の両輪にある。安倍は19年1月の施政方針演説で、外交・安全保障の基軸は日米同盟とし、安保法制の成立で「日米同盟は今、かつてなく強固なものとなっています」と誇った。さらに「わが国自身の主体的・自主的な努力によって、守り抜いていく。新しい防衛大綱の下、そのための体制を抜本的に強化し、自らが果たし得る役割を拡大します」と結んだ。
米中対立と日中改善――。安倍外交にとっては、相反するベクトルが進行している。「板挟み」状態の中で「出口」を塞いでいるのが、今や時代遅れといってもいい「同盟思考」である。中国もそこを突いて「友好」カードを切ってくるだろう。
中国の経済規模が日本の3倍になろうとする現在、「中国を包囲するのはそもそも無理な話」とある外務省高官は言う。「対中抑止」効果を疑問視したラッド元豪首相の発言もその懸念から来ている。
次回の第4回では、安倍が成果を挙げたいと意気込む対ロシア、北朝鮮外交を取り上げる。歴代政権が成し遂げられなかった外交を自分の手でという「レガシー願望」は、空回りするばかりである。(敬称略)