私が所属する国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、 日本政府に対し、(1)TPP協定草案の開示、及び交渉過程にかかる関係文書の国民への開示を行うこと、(2) 各分野の協定条項による影響に関する適切な評価を先行的に行うこと、(3)各分野の協定条項によって影響を受ける利害関係者・団体の参加と協議を行うこと、を求めた
そして、交渉に当たっては最低限、(1) 交渉各国の国内的な人権保障のセーフガードを後退させるいかなる合意も行わないこと、(2)ISDS条項を削除すること、(3)TPP協定に、自国民の基本的人権の保護を後退させないセーフガードとなる人権保護条項を設けること、を求めてきた。
しかし、個別分野で一定の利害調整がはかられた分野はあるものの、前述のとおり情報開示と議論を欠いたまま協議が進められ、ISDS条項は撤廃されず、人権保障に関するセーフガードについても、労働分野などの一部を除き、言及がない。しかし、人権に関する様々な懸念を交渉国が握り潰し、人権を危機にさらす合意を締結することは許されない。
今後、交渉は最終合意、そして、各国での承認のプロセスに入っていく。日本の国会承認は年明けになると言われているが、アメリカの民主党大統領選有力候補のヒラリー氏、サンダース氏がともに反対を唱えるなど、TPPの各国承認プロセスは一筋縄ではいかない。
私たちも、政府の対応を十分に監視し、声を上げていく必要がある。
でなければ、TPP交渉によって、国民にとって最も身近な人権に壊滅的なダメージを与える結果となるかもしれないからだ。